(2016年1月) これまでの研究ではビタミンB類が認知症の予防に有効であるという結果になったものと有効でないという結果になったものが混在していますが、"Journal of Alzheimer's Disease" に掲載されたオックスフォード大学などの研究によると、ビタミンB類が認知機能低下の抑制に効果を発揮するにはオメガ3脂肪酸が必要です。
軽度認知障害(MCI)の患者250人超の認知機能とオメガ3脂肪酸(DHAとEPA)の血中濃度を測定したのち、患者たちを2つのグループに分けてビタミンB類(葉酸・ビタミンB6・ビタミンB12)のサプリメントまたはプラシーボを2年間にわたり服用してもらいました。 そして2年後に再び認知機能を測定して当初のスコアと比較しました。
ビタミンB類による認知機能維持への効果においてはEPAよりもDHAの血中濃度の方が重要であると思われますが、この点に関しては今後の研究で確認する必要があります。
「これまでの研究では、ビタミンB類によりMCI患者の脳の萎縮や記憶力の低下を鈍化あるいは予防できること、そしてビタミンB類のこの効果がホモシステイン(*)の血中濃度が平均以上であるMCI患者において最も顕著であることが示されています」
「オメガ3脂肪酸・ホモシステイン・脳の萎縮速度の間に関係があることはわかっていた(†)のですが、オメガ3脂肪酸とビタミンB類の相互作用により認知機能の衰えが阻止されるかどうかを調べたかったのです」(*) ホモシステインは脳にとって有害な物質で、これを分解するには葉酸・ビタミンB6・ビタミンB12が必要となります。 MCI患者の中でも認知機能が低下している理由がビタミンB不足によるホモシステインの増加である場合にビタミンBの補給の効果が高いということでしょう。
冒頭にもリンクを貼った「ビタミンB12と葉酸のサプリメントは認知症予防に効果が無い」では、ビタミンB12と葉酸のサプリメントによってホモシステインは減ったものの認知機能への効果は見られないという結果になっています。
(†) オメガ3脂肪酸にホモシステインの量を減らす作用があることが知られています。 オメガ3脂肪酸により冠動脈疾患のリスクが減る理由の1つも、オメガ3脂肪酸のこの作用のお陰だと考えられています。