高齢者における肉の摂取量と睡眠の関係

(2019年4月) "Aging and disease" に掲載されたスペインの研究で、高齢者における肉の摂取量と睡眠の関係が調査されています。

研究の背景

肉にはタンパク質が豊富ですが、このタンパク質は体内で作られるアミノ酸の原料となります。 そして、そうしたアミノ酸の一部はセロトニンやメラトニンといった睡眠/覚醒に関与する神経伝達物質の前駆体です。 そいうわけで、研究グループは肉の摂取量と睡眠の関係を調べることにしました。

研究の方法

60才以上の男女 1,341人(平均年齢は60代後半)を対象に、肉類の摂取量を尋ねたのち 2012年と 2015年末に睡眠時間睡眠の質を尋ねました。

結果

肉類(魚肉は含まない)の摂取量が最低(87g/日未満)のグループに比べて最高(128g/日以上)のグループは、睡眠時間が大きく(2時間以上)減るリスクが93%増加していました。

肉類の摂取量が多い場合には、イビキをかくリスク(+106%)と睡眠の質が悪いリスク(+71%)も増加していました。

肉類の摂取量が100g/日増えるごとに、睡眠時間が大きく変化するリスクと睡眠の質が悪いリスクの両方が60%増加するという計算になります。

赤身肉/加工肉と白身肉(鳥やウサギの肉)に分けて分析しても結果の方向性は同じでした。

解説

赤身肉/加工肉だけでなく白身肉でも睡眠に悪影響が見られたことなどから、肉類の睡眠への影響はタンパク質によるものかもしれません。

これまでの研究で、タンパク質の摂取量が多いと血中に存在するLNAA(*)に対するトリプトファンやチロシンの比率が下がり、脳において睡眠を誘導する物質の合成が低下し、その結果、睡眠に悪影響が生じることが示されています。
(*) 大型中性アミノ酸。 フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、ヒスチジン、スレオニン、およびグルタミン。

高齢者ではインスリン感受性が低下している人やサルコペニアの人の割合が増えますが、こうした状態になると血中のLNAAが筋肉に取り込まれるペースが落ちることや、それによってLNAA血中濃度に対するトリプトファン血中濃度の比率が下がり脳内のトリプトファンの量が減ることも以前の研究で報告されています。

過去の研究ではさらに、赤身肉や加工肉の摂取量が多い人はC反応性タンパク質やインターロイキン-6などの炎症マーカーの血中濃度が高いこと、そして炎症マーカーの血中濃度が高い人は睡眠障害のリスクが高いことも示されています。 今回の研究で最も摂取量が多かったのが赤身肉/加工肉だったので、今回見られた肉類の摂取量と睡眠との関係には炎症も関係している可能性があります。

しかしながら、研究グループは肉を食べることに対して否定的ではありません。 「高品質なタンパク源(お肉)と、睡眠に良い影響をもたらす(タンパク質の睡眠への悪影響を相殺するような)栄養素との理想的なバランスについて今後の研究で調べる必要がある」と述べています。

高齢者は虚弱やサルコペニアを予防するためにタンパク質をしっかりと摂る必要があります。