糖尿病治療薬メトホルミンは血流中ではなく腸で効果を発揮する

(2015年8月) "Diabetes Care" 誌に掲載されたノースカロライナ大学の研究により、糖尿病治療薬であるメトホルミンが主として血流中ではなく大腸(lower intestine)で効果を発揮するというエビデンスが得られました。出典: Diabetes Drug Metformin’s Primary Effect Is in the Gut, Not the Bloodstreama

2型糖尿病の治療薬としてメトホルミンが登場したのは60年近くも前になりますが、その作用の仕組みは未だ明確にはわかっていません。

今回の研究の有用性
従来のメトホルミンはメトホルミンの血中濃度が高くなり過ぎるために、腎臓の機能が損なわれている糖尿病患者では乳酸アシドーシス(命にも関わる)になる危険がありました。 今回の研究により、 腸で作用するメトホルミンDR(*)でも血糖値が下がる(メトホルミンが血流中に存在しなくてもよい)ことがわかったので、腎臓障害を抱えている糖尿病患者もメトホルミンを使用できるようになるかもしれません。
(*) 遅延放出型メトホルミン(Metformin Delayed Release)。 腸をターゲットとし、血流中に吸収される量が少なくなるように作られたメトホルミン。
研究の内容

今回の研究では2つの試験が行われました。

1つ目の試験

健常者20人を被験者とするランダム化試験により、メトホルミンIR(即時放出型)、メトホルミンDR、およびメトホルミンXR(持続放出型)とで血中のメトホルミン濃度を比較しました。 メトホルミンDRでは、メトホルミンの血中濃度が他の2つのタイプの半分ほどでした。

2つ目の試験
2型糖尿病の患者240人を被験者として、様々な用量のメトホルミンDRとメトホルミンXR、そしてプラシーボとで血糖値を下げる効果を比較しました。
メトホルミンの用量は、DRが 600mg、800mg または 1,000mg を1日1回、XRが 1,000mg または 2,000mg を1日1回というものでした。 試験開始前にメトホルミンを服用していた88%の被験者には、試験開始前の2週間のあいだメトホルミンの服用を控えてもらいました。
メトホルミンDRは、①みなし効力(*)がメトホルミンXRよりも40%高く、②12週間という期間において持続的に、空腹時血糖値をプラシーボよりも統計学的に有意に引き下げました。 メトホルミンDRの副作用は従来のメトホルミンと同様でした。
(*) みなし効力 - "apparent potency"。 検索すると用例はありますが定義は見つかりません。 訳語は適当です。