満腹感を得られないのは腸内細菌バランスの乱れが原因かも(レビュー)

(2018年9月) ジョージア大学の研究グループが、腸内細菌がヒトの摂食行動に及ぼす影響についてまとめたレビューを "American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology" に発表しています。
Elizabeth A. Klingbeil and Claire B. de La Serre. "Microbiota modulation by eating patterns, dietary and macronutrient composition; impact on food intake"

レビューの要旨

  1. 腸内細菌叢やその変化が宿主(ヒトなど)の生理学的な機能と行動の調節において重要な役割を果たすというエビデンスが蓄積されつつある。
  2. 食生活は胃腸管に住む細菌の豊富さを大きく左右する。
  3. 脂質・タンパク質・糖質・食物繊維といった主栄養素の摂取量は、腸内細菌の種類構成および腸内細菌が健康や(宿主の)行動に及ぼす影響の決定において特に重要である。
  4. 近年の研究によると、各栄養素の摂取量だけでなく栄養素を摂取するタイミングやパターンも腸内細菌の種類構成に影響する。
  5. (劣悪な)食生活のために腸内細菌バランスが崩れると、炎症促進作用を有するリポ多糖(LPS)などの副産物の(腸内細菌による)生産量が増加する恐れがある。
  6. 腸内で炎症が促進されると、腸管透過性に異変が生じて血流中のLPS濃度が増加する(腸管バリア機能が低下してLPSが腸内から血流中に漏れ出す)。これを「代謝性エンドトキシン血症」という。
  7. げっ歯類の研究では、血流中のLPS濃度が慢性的に高い状態にあるだけで過食症が引き起こされることが示されている。
  8. (げっ歯類に)LPSを慢性的に投与すると、腸脳軸(gut-brain axis)および迷走神経が仲介する満腹感のシグナル伝達が特に損なわれる。
    胃腸管内に存在する各種栄養素の質と量に関する情報は、迷走神経により脳幹にある孤束核へと伝えられる。
  9. 腸内細菌バランスの乱れが迷走神経の求心性の(末梢から中央へと向かう)経路のリモデリングに関与しているというエビデンスや、ネズミの実験において高脂肪食を与えられて(腸内細菌バランスが乱れて)いる個体の腸内細菌の種類構成を正常化するだけで迷走神経のリモデリングを防げるというエビデンスが存在する。
  10. 上記から、腸内細菌叢が腸-脳間のコミュニケーションと摂食行動に関与していると考えられる。 食事をしても満腹感を得られなかったり過食症になったりするのには、腸内細菌に由来する炎症が深く関与している可能性がある。