(2017年10月) "Nutrients" 誌に掲載されたノース・カロライナ大学などの研究で、牛乳を飲む習慣がある人は認知機能が低下しやすいという結果になりました。
研究の方法
米国に住む男女1万4千人弱を対象に、食生活に関するアンケート調査を行ったうえで、1990~2013年のあいだに認知機能を3回調べました。
結果
牛乳を毎日グラスに1杯超飲む習慣がある場合には、牛乳をほとんど飲まない場合に比べて、20年間における認知機能の低下幅が10%増えていました。
解説
仮説: D-ガラクトースが原因?
牛乳には糖の一種であるラクトース(乳糖)が含まれています。 ラクトースからは体内でD-ガラクトースが作り出されますが、このD-ガラクトースは動物実験において、認知機能の老化を促進するのに使用されるほどです。 D-ガラクトースは酸化ストレスや炎症を引き起こすことで認知機能を老化させると考えられています。
体質による違い
ただし、牛乳を飲んでラクトースからD-ガラクトースが作り出されるのは、体質が乳糖持続型(LP)の人だけで、乳糖非持続型(LNP)の人は牛乳を飲んでも体内でD-ガラクトースが発生しません。
乳糖持続型(LP)の人
LPの人はラクターゼという酵素の効力が成人後にも持続するために、牛乳を飲むことで摂取したラクトースが小腸でラクターゼにより分解されてD-ガラクトースが形成されます。
乳糖非持続型(LNP)の人
LNPの人では、摂取したラクトースがラクターゼにより分解されないままに結腸にまで至り、そこで腸内細菌により分解されます。 そして、ラクトースが腸内細菌に分解された場合にはD-ガラクトースが過剰に形成されることはありません。
今回の結果との矛盾
ところが今回の研究でLPの人とLNPの人に分けて分析すると、LPの人よりもむしろLNPの人で、牛乳を飲む習慣がある場合に認知機能が下がっていました。