牛乳に含まれるエストロゲンの健康への悪影響を心配する必要はない

(2016年8月) 牛乳に含まれるエストロゲン(女性ホルモン)がホルモンの血中濃度に影響して一部のガンのリスクが増加するのではないかと懸念されていましたが、"Journal of Dairy Science" に掲載されたリュブリャナ大学(スロベニア)の研究(マウス実験)によると、その心配は無さそうです。

この研究で牛乳に自然に含まれるエストロゲンの100倍の量をマウスに与えても、エストロゲンの血中濃度や生殖器への影響が見られなかったのです。 牛乳に普通に含まれるエストロゲンの千倍の量を与えて初めて、生殖器の健康への影響が見られました。

牛乳に含まれるエストロゲン

牛乳には天然のエストロゲンが含まれており、妊娠中の牛ではその量が増加します。 現在の慣行では、子牛が生まれる予定日の60日前まで搾乳が行われますが、妊娠27週目以降の牛から採れた乳はエストロゲンの含有量が妊娠していない牛から採れた場合の20倍となります。

研究の方法
マウスに牛乳を飲ませて、牛乳に自然に存在する量のエストロゲン、その100倍の濃度、および千倍の濃度が①エストロゲン(*)の血中濃度、②子宮の重量(雌マウスのみ)、③テストステロン血中濃度・精巣の重量・精嚢の重量(雄マウスのみ)に及ぼす影響を調べました。
(*) エストロン(E1)および17βエストラジオール(E2)。
結果

妊娠中の牛から採れた乳を飲ませても、マウスのE1とE2の血中濃度は上昇せず、雄雌を問わず生殖器官の重量に変化はありませんでした。 エストロゲンを自然の100倍の濃度(10ng/mL)で含有する牛乳を飲ませても同様でした。

エストロゲンの濃度を千倍にまで増やすと、マウスのエストロゲン血中濃度が増加し、さらに雌では子宮の重量が増加し、雄ではテストステロン(男性ホルモン)の血中濃度が低下しましたが、自然の牛乳にエストロゲンがこの濃度で含有されることは考えられません。

解説

これまでの研究で、大量のエストロゲンであっても胃腸系や肝臓系により不活化されてしまって全身には届かないことが示されています。 牛乳に多少のエストロゲンが含まれていてもマウスに影響が見られなかったのも、これが理由かもしれません。

ただし、今回の研究は大人のマウスを用いて行われたため、思春期以前の子供の場合にどうであるかについては今後の研究で別途に調べる必要があります。
この研究のスポンサーは不明ですが、"Journal of Dairy Science" は "American Dairy Science Association(ADSA)" が発行しているジャーナルで、ADSAは乳製品業界のために尽力することを目的とする団体です。