漢方薬「ライコウトウ」が膵臓ガンに効果?

(2012年10月) ミネソタ大学の研究で、「雷公藤」という植物から作られた薬を膵臓ガンのマウスに投与したところ、膵臓の腫瘍が消滅しました。 雷公藤(学名: Tripterygium wilfordii)は、別名をタイワンクロヅルといい漢方薬としてリウマチの治療に用いられます。

雷公藤から作られた薬の効果は凄まじく、マウスの腫瘍が日に日に減っていきました。 そして、治療開始から40日目で腫瘍の兆候が消滅し、治療を止めた後にも消滅したままでした。

ミネリド

雷公藤にはトリプトリドという物質が含まれており、このトリプトリドにガン細胞を死滅させる効果のあることが過去の複数の研究で示されています。

研究グループは、雷公藤から作ったこの薬をミネリド(Minnelide)と名付けました。 「ミネソタ」と「トリプトリド」を合わせた名前だそうです。

ミネリドの臨床試験

2013年9月にミネリドのフェーズ1臨床試験が、膵臓ガンの患者を対象として開始されています。 この臨床試験は、ミネリドの安全性を確認し、適切な用量を突き止めることを目的としています。

トリプトリドが膵臓ガンに効く仕組み

"American Journal of Physiology"(2014年7月)に掲載されたミネソタ大学の研究(同じ研究グループでしょうか?)により、トリプトリドが GRP78 というタンパク質を抑制することによって膵臓ガン細胞の死滅を引き起こしていることが明らかになりました。

GRP78 は、細胞を死滅から保護する作用を持つタンパク質です。 ガンの細胞や組織に GRP78 が通常の(健康な)組織よりも多く存在することから、膵臓ガン細胞の生存と増殖に関与すると考えられています。

GRP78 と UPR

哺乳類の体内でタンパク質が用いられるには、タンパク質折り畳み(protein folding)と呼ばれるプロセスが細胞の小胞体において発生する必要があります。 タンパク質の折り畳みが速やかに行なわれない場合、折り畳まれ損ねたタンパク質が蓄積して細胞がストレスを被ります。

このストレスが長引くと、小胞体ストレス応答(UPR)という細胞プロセスが活性化します。 UPR は当初は細胞のタンパク質折り畳み能力を力強く促進しますが、UPR によってもタンパク質折り畳みの問題が解決されない場合、UPR は細胞死を引き起こします。

GRP78 の本来の役割は、 UPR によりタンパク質折り畳みが促進されるまでのあいだ細胞を生存させておくことにあります。 ところが、膵臓ガン細胞においては大量に存在する GRP78 が、ガン細胞が細胞死を回避するのを手助け(UPR が起こらないようにする?)し、その結果ガン細胞が死滅せずに増殖してしまいます。

研究の内容

この研究では、ヒト膵臓ガンの細胞と組織を用いてトリプトリドの効果を調べました。 すると、トリプトリドで処理した細胞では UPR が適切に機能し、機能不全を起こした細胞がちゃんと細胞死を迎えていました。

研究者は次のように述べています:
「今回の研究では、GRP78 の発現量増加により腫瘍細胞が生存しやすくなるけれども、トリプトリドに(腫瘍細胞を)長時間にわたり暴露させておくことで慢性的な小胞体ストレスが生じ、それによって(腫瘍細胞が)最終的に細胞死にいたることが示されました」