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適量の野菜・果物が精神衛生に良い?

(2017年3月) "BMJ Open" に掲載されたシドニー大学の研究で、野菜・果物の摂取量が多い人は精神衛生状態が良いが摂取量が多すぎる場合はその限りではないという結果になりました。出典: Fruit and vegetable consumption and psychological distress...

研究の方法

オーストラリアに住む45才以上の男女6万人超(平均年齢62才)を対象に、野菜・果物の摂取量・生活習慣・精神衛生状態を2~4年間(平均2.7年間)を空けて2回にわたり調査しました。

精神衛生状態の調査の内容
精神衛生状態の調査には Kessler Psychological Distress Scale と呼ばれ10項目から成るアンケートを用いました。 Kessler Psychological Distress Scale では、過去30日間における精神状態に関して次のような質問をします:
  1. 理由もなく「疲れた」と感じた頻度は?(4)
  2. 神経質になった頻度は?(5)
  3. 神経質になり過ぎて何をもってしても気持ちが静まらなかった頻度は?(4)
  4. 「希望が無い」と感じた頻度は?(5)
  5. 落ち着かなく心が休まらない気分になった頻度は?(5)
  6. 気持ちが落ち着かなくてじっとしていられなかった頻度は?(1)
  7. 気分が落ち込んだ頻度は?(1)
  8. 何をするのも億劫だと感じた頻度は?(4)
  9. 悲しくて悲しくて何をしても元気が出なかった頻度は?(1)
  10. 「わたしは価値が無い人間だ」と感じた頻度は?(5)

いずれの質問も「まったく無い」~「四六時中」の5段階(1点~5点)で回答します。 50点満点で点数が高いほど精神衛生状態が悪いということになります。 スコアが22点以上の場合を「精神的な苦悩がある」とみなしました。

結果

あまり明確な結果ではありませんでした。

野菜・果物を食べる量に応じてデータを3つのグループに分けた中で、摂取量が中ほど(5~7食分/日)のグループは摂取量が最低(0~4食分/日)のグループに比べて精神的苦悩が生じるリスク(オッズ比)が14%低くなっていました。

しかし、摂取量が最高(8食分/日以上)のグループに精神的苦悩が生じるリスクは、摂取量が最低のグループに比べて統計学的に有意に低くはありませんでした。

また、野菜と果物に分けて分析すると、野菜でのみ摂取量が中ほど(3~4食分/日)の場合に摂取量が最低(0~2食分)の場合に比べて精神的苦悩のリスクが12%低くなっていました。 野菜だけに限っても、摂取量が最大の場合にはリスクが低くなっていませんでした。

野菜・果物の摂取量が多いと精神的苦悩が生じにくいという関係は男性よりも女性で明確でした。

解説

これまでにも複数の研究で、野菜・果物の摂取量が多い人は抑鬱が生じにくかったり幸福感を感じていることが多かったりすることが示されていますが、今回の研究によると、野菜・果物の摂取が精神衛生に寄与するにしても、その効果が得られるのは摂取量が一定範囲内である場合に限られるのかもしれません。

つまり、野菜・果物の摂取量が多ければ多いほど幸福感が増すわけではないのかもしれないというわけです。

ただし、研究チームによると、交絡要因(*)を完全に排除できていないために摂取量が最大のグループで精神的苦悩のリスクが低くならなかった可能性も考えられます。
(*) 今回の話では、野菜・果物の摂取量と精神衛生状態との関係に影響を及ぼす要因。

(野菜・果物の摂取量が多いと精神的苦悩が少なくなるのではなく)精神的苦悩が少ない人で野菜・果物摂取量が多くなるという可能性や、野菜・果物の摂取量と精神的苦悩の有無が互いに影響しあっているという可能性も考えられますが、この辺りについては今後の研究で調べる必要があります。

野菜や果物を食べると幸せになるのは、野菜や果物に含まれているカロチノイドのお陰かもしれません。 カロチノイドの血中濃度が高いほど楽天的になるという研究があります。