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少しの運動でも高齢者の死亡リスクが低下

(2015年5月) 成人全般に推奨される運動量は中強度の運動を週に150分というものですが、"EuroPRevent 2015" で発表された University Hospital of St-Etienne-Lyon(フランス)の研究によると、それよりも短かい、あるいは楽な運動であっても高齢者の死亡リスクを減らすのに有益です。

過去の研究に150分/週の運動によって成人の死亡率が30%低下するという結果になったものがありますが、その一方で高齢者の60%が150分/週という推奨運動量を実践できていないという推算があります。 この推奨運動量が中年者を想定していて、高齢者のことがあまり考慮されていないというわけです。

研究の方法

今回の研究では、フランス在住で65才超の男女 1,000人超を週当たりの運動量に応じて、次の5つのグループに分けました:
  1. MET時間が1未満のグループ
  2. MET時間が1~3.74のグループ
  3. MET時間が3.75~7.49の(中強度の運動を週に150分間行うのに相当する)グループ
  4. MET時間が7.5~15のグループ
  5. MET時間が15超のグループ
「MET時間」については下記参照。

そして、その後13年間にわたって追跡調査を行い、死亡と心血管イベント(心臓発作や脳卒中)を記録して運動量との関係を調べました。

結果

追跡期間中に 1,000人ほどのうちの約10%が死亡しました。 3~5のグループは1のグループに比べて死亡リスクが57%低下していましたが、少しだけ運動をする2のグループであっても、ほとんど運動をしない1のグループに比べて死亡リスクが51%低下していました。

定年退職後になってから運動習慣を開始または再開したというグループでも死亡リスクが1/3に低下していましたが、(定年退職後に)運動量が少量である場合にも運動量を減らした(*)グループでは死亡リスクが増加していました。
(*) そもそもの運動量が少ないグループの話なのですから「運動量を減らした」というのは恐らく「運動習慣をやめた」というのとほぼ同じ意味でしょう。

今回の結果から、推奨運動量に達しない程度の少ない運動量であっても運動習慣を続けるのが高齢者の健康にとって有益だと思われます。

研究者は高齢者が運動習慣を開始するときの目安として、1日15分の運動を1週間あたり5日(つまり15分×5日=75分/週の運動を)という運動量を推奨しています。 運動の内容は、比較的速いペースでのウォーキングや、自動車、水泳、体操などです。

メタ分析

上記の結果は、同じ研究チームが行い同じく "EuroPRevent 2015" で発表されたメタ分析(複数の研究のデータを総合的に分析する研究)の結果によって支持されています。 このメタ分析では約12万人分のデータを分析し、中~高強度の運動を75分/週行う高齢者で死亡率が22%低下するという結果になりました。

MET時間とは

「MET」とは「Metabolic Equivalent of Task(身体活動による消費カロリー)」のことです。 激しい身体活動であるほどMETの値は大きくなります。 例えば、時速2.7km(すごく遅いペース)での散歩のMETは2.3ですが、ジョギングのMETは7.0、縄跳びのMETは10.0です。

「MET時間」は「MET×経過時間」で計算します。 例えば、2.3METの運動を2時間行う(2.3MET×2時間)と4.6MET時間の運動量となります。