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カリウムだけでなくナトリウムも摂取量が多いほうが血圧が低い

(2017年4月) 米国生理学会で発表されたボストン大学の研究によると、ナトリウムの摂取量を意識的に減らしても高血圧のリスクが逆に増えるだけかもしれません。

研究の背景
米国の食事ガイドラインでは、ナトリウム摂取量を次のように制限することを提唱しています:
  • 50才未満の健康な人は2.3g/日まで。
  • 黒人、50才以上の人、高血圧・糖尿病・慢性腎疾患の患者は1.5g/日まで。

しかし、このような指針を裏付けるデータは実はほとんど存在しません。

そして、近年の複数の研究により、このような指針の妥当性が疑われ始めています。 "The Lancet" 誌に掲載された 2016年の大規模な研究でも、ナトリウム摂取量が普通の場合よりも少ない(3g未満/日)場合のほうが心臓発作・脳卒中・死亡のリスクが高いという結果になっています(高血圧は心臓病や脳卒中のリスク要因)。

「血圧のコントロールにおいてはナトリウム以外のミネラル(カリウム・マグネシウム・カルシウム)の摂取量にも目を向けるべきだ」という声も上がっています。

研究の方法

高血圧ではない30~64才の男女 2,632人の食生活を6日間かけて調べたのち、血圧の状態を16年間にわたり追跡調査しました。

各ミネラル(ナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウム)それぞれの摂取量に応じてデータを5つのグループに分割し、年齢・性別・教育水準・身長・身体活動量・喫煙/飲酒習慣を考慮しつつグループ間で血圧を比較しました。

結果
ナトリウム
研究チームにとっても意外なことに、ナトリウム摂取量が多いグループほど16年後の時点における血圧が低いという結果でした。 5つのグループの収縮期(最高)血圧は次のようなものでした:
  • 摂取量がもっとも少なかったグループ: 134.5mmHg
  • 摂取量が2番目に少なかったグループ: 132.2mmHg
  • 摂取量が真ん中だったグループ: 132.3mmHg
  • 摂取量が2番目に多かったグループ: 130.3mmHg
  • 摂取量がもっとも多かったグループ: 128.3mmHg
アブストラクトには各グループのナトリウム摂取量が記載されていません。 プレスリリースのグラフを見ると、摂取量がもっとも少ないグループで2.5g/日未満、もっとも多いグループで4g/日以上となっていますが、アブストラクトでは5つのグループに分けているのに対して、グラフでは3つのグループに分かれているという問題点があります。

拡張期(最低)血圧でも同様に摂取量が増えるにつれて血圧が低くなっており、摂取量が最少のグループで78.1mmHgなのが摂取量最大のグループでは75.5mmHgでした。

その他のミネラル

カリウムの摂取量が多いほど血圧が低くなっていました。 カリウム摂取量が最少のグループでは収縮期血圧が134.2mmHgで拡張期血圧が78.2mmHgだったのに対して、カリウム摂取量が最大のグループでは収縮期血圧が129.4mmHgで拡張期血圧が75.6mmHgでした。

カルシウムやマグネシウムに関しても、カリウムと非常によく似た摂取量と血圧の関係が見られました。

ナトリウムと他のミネラル
ナトリウム摂取量が少ない(2.5g/日未満)グループと多い(2.5g/日以上)グループとに分け、さらにカリウム摂取量が少ない(2.3g/日未満)グループと多い(2.3g/日以上)グループに分けて、ナトリウムとカリウムの摂取量を組み合わせたものと血圧との関係を調べたところ次のような結果となりました:
  • ナトリウムとカリウム両方の摂取量が最も多い場合に、収縮期血圧と拡張期血圧が最も低かった(129.5mmHgと75.6mmHg)。
  • ナトリウムとカリウム両方の摂取量が最も少ない場合に、収縮期血圧と拡張期血圧が最も高かった(135.4mmHgと79.0mmHg)。

マグネシウムやカルシウムでも、カリウムの場合と非常によく似た結果となりました。

結論

1日のナトリウム摂取量を米国の食事ガイドラインが指示するように2.3g/日未満に抑えても血圧にとって有益ではないということになります。 それどころか、ナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウムの摂取量が多いほど血圧が低くなります。

研究者は次のように述べています:

「今回の結果からしても、塩分摂取量に関する現行のガイドラインは間違っている恐れがあります」

「高血圧や心血管疾患(心臓病や脳卒中)のリスク低下にとっては、特にカリウムの摂取量を増やすことが大切だと思われます」

「体質によっては塩分の摂取量を減らすのが有益となる人もいると思われますが、そういう体質の人を簡単に見つけ出す方法や、そういう体質の人にとって適切なナトリウムとカリウムの摂取量を今後の研究で探し出す必要があります」