口の中を清潔にするための道具

家庭で口の中を清潔にするための道具としては、主に次の4種類が用いられます: ①普通の歯ブラシ、②デンタル・フロス(糸ようじ)、③ポイント・ブラシと呼ばれる先のとがった歯ブラシ、そして④舌苔(ぜったい)を取るための舌ブラシ。 以下は、これらの道具の使い分けや、購入する際のポイントをまとめたものです。

歯ブラシの選び方
自分に合ったな歯ブラシを選ぶことは、正しく歯を磨くのと同じくらい重要です。 自分の歯並びや、口の大きさ、歯肉の健康状態を考慮して自分にぴったりの歯ブラシを使いましょう。

歯ブラシは、普通の歯ブラシとポイント・ブラシの併用など、複数を日常的に用いると良いのですが、まずは普通の歯ブラシを選ぶ際のポイントについて。

歯ブラシを選ぶ際のパラメーターとなるのは主として、①ブラシの固さ、②毛先の細さ・形状・材質、③ヘッドのサイズ、④歯ブラシの柄の形状の4つです。

  • 毛の固さ
    歯ブラシの毛の固さは一般的に、柔らかめ・普通・固めという3タイプに分類されます。

    「柔らかめ」では毛が曲がって歯垢(プラーク)を落とせないと言う人がいますが、そう感じる人は磨き方を間違えています。 歯ブラシは毛先、特に角の部分で歯垢を落とします。 したがってブラッシングの際に、毛先が曲がるほどには歯に押し当てません。 毛先が歯に当たるか当たらないかという微妙な距離で行うブラッシングが効果的なのです。

    さらに、歯垢は柔らかいので、柔らかい歯ブラシであってもきちんと毛先さえ当たれば、十分に落とすことができます。 最近では、特に歯周病の人でなくても柔らかめの歯ブラシを勧める歯医者さんが増えてきているそうです。

    毛の固い歯ブラシは、ブラッシングの際に歯ブラシをよほど軽く歯茎に当てるのでなければ歯茎が下がる原因になります。

  • 毛先の細さ・形状・材質
    歯ブラシの毛の材質には、一般的なナイロン製のものと、馬などの動物の毛を用いたものがあります。 動物の毛で作られた歯ブラシは独特の心地よい感触がありますが、動物の毛がタンパク質で出来ているため、ブラシに雑菌が繁殖しやすいというデメリットもあります。

    毛先の細さについては、細いほうが歯周ポケット(歯と歯茎の間の隙間)に溜まる汚れを除去できると言われていますが、この効果に関しては、次のように否定的な見解を持つ歯科医のほうが多いようです:

    1. 普通の歯ブラシによるブラッシングで十分だ。
    2. 歯周ポケットの中に毛先を突っ込んで磨くことで歯茎を傷めてしまうのではないか。
    3. 毛先が極細の歯ブラシでも、歯周ポケットの深さ1~2mmの辺りまでしか入らないし、場所によっては歯周ポケットに全く入らない。

    そして、歯垢を落とす能力に関しては、毛先が細い歯ブラシは、毛先が太いものよりも劣っています。 歯垢を落とす能力が高いのは毛先がラウンド加工されている歯ブラシです。

    それから、毛先の面が凹凸になっている歯ブラシは避けるのが無難でしょう。 ブラシの凹凸部分が自分の歯並びの凹凸に合致していれば有効でしょうが、合致することはまず無いと思われます。 そして、歯ブラシと歯並びの凹凸が合致していないのであれば、凹凸歯ブラシよりも普通の歯ブラシのほうが歯に当たる面積が広くなります。

    歯の凹凸の凹の部分を磨くには、凹凸ブラシではなく、ポイントブラシやデンタル・フロスを用いましょう。

  • ヘッドの大きさ
    歯ブラシのヘッド部分(毛が植えられている部分)の大きさも重要です。 ヘッドが大き過ぎると細かい部分を磨けませんし、あまりにも小さすぎると一度に磨ける面積が少ないためにブラッシング回数が多くなって大変です。

    ヘッドの部分の大きさの目安は自分の前歯2本分だと言われていますが、それより少し小さいくらいでも良いでしょう。 歯並びが悪い人の場合は、子供用の歯ブラシもお勧めです。

  • 柄の形状
    柄がカーブしている歯ブラシや、柄に余分な飾りがついている歯ブラシは、ブラッシングに支障が出ることがあるため避けるのが無難です。
ポイントブラシとは
ポイントブラシという、尖った形状のブラシがあります。 ポイントブラシは歯と歯の入り組んだ部分を磨きたいときに非常に便利です。 痒い所に手が届くという感じで、普通の歯ブラシでは届かないし、デンタルフロスでも磨きにくいという部分もピンポイントで磨けます。 歯並びが悪い人には特に有効です。

ポイントブラシは、一番奥の奥歯の後ろ側を磨くのにも重宝します。 一番奥の奥歯の後ろ側はポイントブラシでしか磨けないでしょう。

デンタルフロスとは
歯と歯の間は虫歯になることが多いのですが、歯ブラシでもポイントブラシでも磨けない場所です。 そこで便利なのがデンタルフロスです。

デンタルフロスは糸状の清掃用具で、必要な長さだけを切り取って、歯の上から歯と歯の間にくぐらせて使います。

歯ブラシでは歯と歯の間に挟まった食べカスを取ることが出来ませんが、かといってこれを放置しておくと、食べカスをエサにして細菌が繁殖し、悪臭を放つようになります。 デンタルフロスを使うと、このように歯と歯の間に挟まった食べカスも楽に取ることが出来ます。

歯と歯の間がきっちりと詰まっている場合にはフロスが入らないのですが、食べ物が頻繁に挟まるような部分であればフロスも比較的容易に入ります。

デンタルフロスには、「糸ようじ」などの商品名でプラスチックの柄の先で二股に分かれ、そこにフロスが張られているものもありますが、虫歯治療でかぶせ物をしている人は、このタイプのフロスは避けたほうが無難です。

糸タイプの普通のフロスであれば、フロスを歯間に入れるときこそ歯列の上側から糸を強引に入れる必要がありますが、歯間の掃除を済ませた後には、糸の一方の指を離すことで、歯と歯の間の根元のほうから横方向にフロスをスーッと引き抜くことが出来ます。

ところか、糸ようじタイプの商品では糸の両側が固定されているために、掃除後に糸ようじを歯間から引き抜くときに、歯列の上側から糸を強引に入れたときと同じようにして、歯の根元から上部に向かって強引に引き抜くことしか出来ません。

虫歯治療でかぶせ物をしている場合には、糸ようじを強引に引き抜くときに、糸がかぶせ物の継ぎ目に引っかかってかぶせ物が取れてしまう恐れがあると思います。(この可能性に気付いてから早々に普通のデンタルフロスに切り替えたので、糸がかぶせ物に引っかかっているときに実際に強引に引っ張るとどうなるかは知りませんが、おそらくやっぱり取れるんじゃないでしょうか)

舌ブラシ
舌ブラシとは、舌苔を清掃するための道具です。

舌苔(ぜったい)とは、死滅した舌の細胞や食べカスをエサとして、細菌が過剰に繁殖している状態のことです。 舌苔は、口臭の主要な原因の1つです。 唾液が不足していると舌苔が生じやすくなります。

舌ブラシは、毛先が柔らかいものを選び、舌を掃除するときも優しくしましょう。 細菌は舌の奥の方に多いので、出来るだけ(えずかない範囲内で)奥の方から掃除すると効果的です。

歯ブラシの手入れ
歯ブラシには驚くほど多数の細菌が繁殖していますが、通常は、使用後に水で洗って水気をよく切り、乾燥しやすい状態で保管しておくだけで十分です。 風通しの悪い容器の中などに保管するのは、細菌が活発に繁殖する原因になるので避けましょう。

歯ブラシに繁殖する細菌がどうにも気になるという場合、あるいはインフルエンザなどに罹っている時に使った歯ブラシを消毒したい場合には、過酸化水素水を用います。 濃度1.5%の過酸化水素水(例えば、濃度3%の過酸化水素水を水であれば水道水で半分に薄める)の中で歯ブラシをグルグルとかき回して毛先に過酸化水素水を馴染ませた後に1分間漬けて、水道水で良く洗い流してから、風通しの良いところで乾燥させます。

歯ブラシが耐えられる温度は80℃までなので、熱湯による消毒はできません。 ナイロン製の歯ブラシの毛は電子レンジや皿洗い機でも傷みます。

歯ブラシの使用後に過酸化水素水で毎回殺菌するのが面倒だという人には、紫外線で歯ブラシを殺菌するという器具も出ています。 ただし、ニューヨーク大学歯学部の教授によると、このような器具は効果が期待できないばかりか、紫外線がナイロン製の歯ブラシの毛が傷んだり、細菌のDNAが変質して耐性菌が生まれる原因となる可能性があります。

交換の目安
歯ブラシは3ヶ月に1度、あるいは毛先が開いてきたら交換する時期です。「毛先が開いてきたら交換の時期だ」と言われているのは、歯ブラシの毛の部分のうち歯垢を落とすのに最も活躍しているのは「かど」の部分であるためです。