ガン患者用の医療ガイドラインを作成する医師・研究者の86%が医療業界から資金を供与されている

(2016年8月) "JAMA Oncology" に掲載されたノースカロライナ大学の研究によると、N C C N ガイドライン(*)の策定に携わる医師や研究者の86%が、製薬会社や医療機器業界から資金を供与されています。
(*) ガン患者ケアのために National Comprehensive Cancer Network(米国)が作成するガイドライン。
NCCNガイドラインは医師の診療方針に影響するだけでなく、処方薬の適応外処方に保険を適用すべきかどうかを米国の公的医療保険制度(Centers for Medicare and Medicaid Services)が判断する際にも参考として用いられます。
NCCNガイドラインには日本語版もあります。 リンク先のサイトを見ると、ガン関係の複数の学会がNCCNガイドライン日本語版に携わっているようです。
研究の方法
米国の "Open Payments" という制度(*)に従い公開された医療業界による資金供与に関するデータを調査して、NCCNガイドラインのうち4種類のガンに関するものにおいてパネリストとなった125人の医師に対して医療業界が 2014年のうちに行った利益供与を特定しました。
(*) "Open Payments" は "Patient Protection and Affordable Care Act(患者保護・医療費負担を適正化するための法律)" の規定に基づく制度です。 この規定では、米国の製薬メーカーや医療機器メーカーが医師や医大付属病院に10ドルを超える金銭的な価値を有する何かを供与したときに、その事実を公開することが義務付けられています。
結果
肺ガン・乳ガン・前立腺ガン・結腸ガン向けのNCCNガイドラインの策定に関わったパネリスト125人のうち、108人が何らかの形(*)で医療業界から資金供与を受けていました。 その大部分はNCCNが資金供与に関して定める基準(†)の範囲内ですが、その基準を超えて資金を供与されているパネリストも8人(6%)いました。

(*) 食費や宿泊費の支払い、あるいは講演料、研究資金などとして。

(†) NCCNでは、パネリストとしてガイドラインの策定に関わる医師が医療業界から受け取れる金額の上限を定めています。 受け取る金額の多さによっては、パネリストとなる医師が医療業界にとって都合の良いようにガイドラインを捻じ曲げてしまう恐れがあるためです。

NCCNは、パネリストが1つの企業から受け取る金額が2万ドルを超えてはならず、また、複数の企業から受け取れる金額の合計がが5万ドルを超えてはならないと定めています。

2014年に製薬会社が行った資金供与の95%超(2千9百万ドル)は、研究資金の供与という形で行われましたが、食費や旅費という形で行われたものも一部(125万ドル)存在しました。

パネリストのうち、食費・宿泊費・顧問料などを受け取っていたのは84%、研究資金を受け取っていたのは47%でした。

解説

研究チームによると、臨床試験で新しい薬や治療戦略を調べる場合には医療業界による研究資金の提供は不可欠ですが、研究資金以外で食費や顧問料などを受け取るのは根拠が不透明です。

研究者は次のように述べています:
「重要なのは、医療業界からの資金供与がNCCNガイドラインの内容に影響しなかったかどうかです」
別の研究者は次のように述べています:
「医療業界から資金を供与されるとパネリストの意見が必ず歪むというものでもありませんが、①資金供与の実態と②資金供与が医療ガイドラインの内容に影響を及ぼす影響を分析する必要はあります。 医療ガイドラインは患者ケアの方針ひいては医療コストにも関わってくるのですから」