一部の抗がん剤は夜間に投与すると効果的かも

(2014年10月) "Nature Communications" 誌に掲載されたワイツマン科学研究所(イスラエル)の研究によると、一部の抗がん剤は(個人の睡眠サイクルにおける)夜間に投与するのが効果的であると思われます。

研究の概要
研究チームは、次の2つの受容体(細胞表面に存在するタンパク質分子であって、他の細胞が分泌した生化学的メッセージを受け取り細胞内部へと渡す)に着目しました:
  • 上皮細胞成長因子受容体(EGFR)。 EGFR はガン細胞などの細胞の成長と遊走(migration)を促進します。 "erbb1" や "her1" とも呼ばれる。
  • グルココルチコイド(GC)受容体。 GC は日中におけるエネルギー量の維持と、代謝的な物質交換(metabolic exchange of materials)に関与するステロイド・ホルモンです。 GC は、人がストレスを感じたときに増加して人体を警戒態勢へと導くので、ストレス・ホルモンとして扱われることもあります。

人体には複数の種類の受容体が備わっているので、複数のメッセージが同時に受け取られますが、メッセージには優先順位があります。 研究チームが行った実験により、GC 受容体がステロイド・メッセンジャー(GC のことでしょうか)と結合している時には細胞の遊走が抑制されることが明らかになりました。 (GC 受容体よりも EGFR が優先されるということでしょう)

実験1

ステロイド(GC)の体内量は人が目覚めている時間帯にピークとなり、睡眠中に減少します。 そこで研究チームはマウス実験を行って、睡眠/覚醒のリズムによる GC の増減が EGFR にどのように影響するかを調べたところ、EGFR が(GCが減少する)睡眠中に活性化し、目覚めているときに休止することが明らかになりました。

実験2

次に、この発見がガン(特に成長と拡散に EGFR を用いるタイプのガン)にどのように関与するかを調べるため、ガンのマウスにラパチニブという抗がん剤を時間帯を変えて投与するという実験を行いました。 ラパチニブは乳ガンの治療に用いられる薬で、EGFR を阻害することによってガン細胞の成長と遊走を防ぎます。

その結果、ラパチニブを投与する時間帯(睡眠中か目覚めているときか)によって腫瘍のサイズに有意な差が生じました。 この結果により、ガンの成長を左右しているのが1日のうちの GC ステロイド量の増減である可能性が示唆されます。

結論
今回の研究から、一部の抗がん剤は夜間に投与するのが効果的であると思われます。 研究者は次のように述べています:
「ガンの治療は昼間に行われることが多いですが、昼間というのは患者の体自体がガンの拡散を抑えている時間帯です」