認知症の原因が NPH であれば手術で治る

認知症と診断される人の5%(米国の場合)が、正常圧水頭症(NPH)という治療可能な疾患です。

NPH は手術で治すことのできる疾患ですが、その症状が治すことができない他の認知症に非常に似ているために NPH の治療に必要な手術がなされないことが多いのです。

NPH は1960年代に知られるようになった稀少な病気で、脳脊髄液を排出あるいは吸収するシステムが上手く機能せずに、脳内に水が溜まるのが原因で発症します。 脳室という脳の空洞が拡大し、そこに余分な水が溜まるために、動作や、膀胱機能、認知機能(記憶、思考、問題解決、発話など)を司る脳の領域が圧迫されるのです。

脳内に水が溜まるようになる原因は不明ですが、頭部の外傷や、脳卒中、髄膜炎、脳腫瘍、あるいは頭部の外科手術の後に発症することが多いようです。

NPH と診断される人の大部分は60歳以上で、症状は、記憶力の衰えや、アルツハイマー病のような認知機能の衰え、パーキンソン病のような歩行困難、失禁などです。 人格や振舞いの変化、頭痛、吐き気、視覚障害などが生じるケースもあります。

NPH は、MRI または CT スキャンで脳を検査することで診断できます(脳室が拡張されてに脳脊髄液が溜まっているかどうかを見る)が、稀少な病気であるために、医師が認知症だと思い込み、必要な検査が行われないことが多いのです。

NPH の手術では、シャントという細いチューブを脳から通常は腹部に通して埋め込み、余分な脳脊髄液が体内に排出されるようにします。 シャントにはバルブが備えられていて、(余分な脳脊髄液が溜まってきて、脳内の)水圧が高まると、脳脊髄液が脳から排出されるようになっています。 排出された脳脊髄液は無害であり、血流中に吸収されます。

このシャント手術は、脳に水が溜まる原因を取り除くのではなく、脳に溜まった水を適宜排出し、それによってNPH の症状を緩和するというものです。

シャント手術の効果が無い患者もいますが、記憶力および、運動能力、認知機能の劇的な回復が見られる患者も多いです。 NPH の診断と手術が早いほど、手術の効果が期待できます。 手術の前に、手術の効果があるかどうかを検査することができます。