〔自閉症〕 樹状突起棘を間引くのに必要となる遺伝子が明らかに

(2014年9月) "Journal of Neuroscience" に掲載されたノースカロライナ大学の研究により、哺乳類において NrCAM という遺伝子をノックアウト(特定の遺伝子を先天的に欠損させる)すると脳に存在する錐体細胞(興奮性の神経細胞)の樹状突起棘が増加することが判明しました。

これまでの研究

過去に発表された複数の研究で、この種の脳細胞(錐体細胞?)に樹状突起棘が過剰に存在するとニューロン間のシナプス結合が過剰になることが示されています。 自閉症には過剰なシナプス結合が深く関与していると考えられています。

研究者は次のように述べています:
「幼児の頃から思春期の頃にかけて樹状突起棘と興奮性結合が間引かれずに過剰となるのが自閉症の一因である可能性があります」

ノースカロライナ大学の過去の研究では、マウスで NrCAM 遺伝子をノックアウトすることによってヒトの自閉症の症状と同じ社会的な振る舞いを示すことが示されています。

今回の研究

今回の研究では、①NrCAM タンパク質が他の2つの分子と結合して錐体ニューロンの細胞膜に受容体を形成すること、そして、②大脳皮質の成熟段階において樹状突起棘が退縮しニューロンが適切に間引かれるのに、この受容体が必要であることが明らかになりました。

つまり、脳が適切に機能するには興奮性シナプスと抑制性シナプスのバランスが取れていることが必要ですが、そのバランスの取れた発達に NrCAM タンパク質が必要だというわけです。

研究者によると、NrCAM 以外にも NrCAM に依存する様々なタンパク質が存在していて、樹状突起棘の量の調節に関与していると思われます。 NrCAM の量を減らすことによって、これらのタンパク質が増加し、それによって樹状突起棘が大量に作られ出すのだと考えられるのです。
「NrCAM の樹状突起への作用がわかったので、自閉症的を振舞いだけでなく樹状突起棘から改善する薬が見つかる可能性があります」
mTOR とシナプス

以前に発表されたコロンビア大学の研究では、mTOR というタンパク質が過剰に存在するためにシナプスが過剰になることが示されており、さらにラパマイシンという免疫抑制剤を用いて自閉症様の振る舞いを消滅させることにも成功していますが、ラパマイシンは様々な副作用があるのが問題です。

NrCAM と mTOR の間に関係があるのかどうか現段階では不明ですが、仮に NrCAM タンパク質の減少により mTOR が過剰に存在しているのであれば、細胞内に存在する mTOR よりも膜結合型のタンパク質である NrCAM の方が治療のターゲットにしやすいと思われます。