腸内細菌がイブプロフェンなどの解熱鎮痛薬の効き目に影響する

(2016年1月) "eLife" 誌に掲載されたペンシルバニア大学の研究によると、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と呼ばれるタイプの解熱鎮痛薬の服用により腸内細菌の構成と多様性に変化が生じたり、腸内細菌の有無が薬の分解に影響して薬の効力を左右したりします。出典: Anti-Inflammatory Drug and Gut Bacteria Have a Dynamic Interplay
NSAID
喉に効くことで有名なイブプロフェンや、アスピリン、ナプロキセン、ケトロラックなどの解熱鎮痛薬がNSAIDです。 アセトアミノフェンは抗炎症作用がほとんど無いためNSAIDには分類されません。
研究の概要

この研究ではマウス実験により、NSAIDの一種であるインドメタシン(イブプロフェンやナプロキセンに似ている)によるCOX-1およびCOX-2の阻害に腸内細菌が関与していることが明らかになりました。

NSAIDの効果と副作用

NSAIDはCOX-1とCOX-2を遮断しプロスタグランジンと呼ばれる脂肪酸を減らすことで抗炎症・鎮痛・解熱などの効力を発揮します。

NSAIDの副作用に胃潰瘍と胃の出血というのがありますが、これはプロスタグランジンが減少するために起こります。 プロスタグランジンに胃の内壁を保護したり血液を凝固させたりする作用があるためです。
インドメタシンの副作用を確認
インドメタシンをヒトに処方されるのと同程度の用量で一回だけ(*)または長期的(†)にマウスに投与したところ、いずれのケースでもプロスタグランジンの生産が抑制され小腸に損傷(腸の透過性増大・潰瘍・出血・穿孔など)が生じました。 これはヒトで言えば、NSAIDの服用によって上部~下部消化管に副作用が生じるのに相当します。

(*) 体重1kgあたり10mgを一回だけ投与。

(†) インドメタシンを20ppmの濃度で含むエサを7日間にわたり与える。
インドメタシンが腸内細菌に及ぼす影響
そしてディープシーケンス(deep gene sequencing)という技法により腸内細菌の構成を調べたところ、インドメタシンの投与(一回だけでも長期的でも)によって腸内細菌の構成が炎症を誘発しやすいもの(*)へと変化していました。
(*) 腸の細菌叢において Peptococcaceae 科および Erysipelotrichaceae 科の細菌(いずれもファーミキューテス門の細菌)の増加が見られ、糞便の細菌叢においてS24-7というバクテロイデス門の細菌の減少が見られた。
インドメタシンの効果における腸内細菌の役割

次に、腸内細菌がインドメタシンの代謝に及ぼす影響を調べるために、抗生物質を用いて腸内細菌を排除したマウスと普通のマウスとでインドメタシンの代謝を比較するという実験を行いました。

腸内細菌を排除したマウスではβ-グルクロニダーゼという細菌酵素の減少によって血流中へと吸収されるインドメタシンの量が減少し、そのために体内で利用されるインドメタシンの量が減ってインドメタシンの作用(プロスタグランジンの抑制)が損なわれていました。

コメント
研究者は次のように述べています:
「腸内細菌の構成は遺伝子・年齢・食生活・1日の時間帯・ペットの存在などに影響されるため、腸内細菌の構成にはかなりの個人差があります。 したがってインドメタシンの効果にも個人差があると思われます」