糖尿病患者における「肥満のパラドクス」が否定されました

「肥満のパラドクス」というのをご存知でしょうか? 肥満のパラドクスとは、肥満が健康に良くないにも関わらず、一部の人においては太っているほうが健康的であるという逆説的な現象のことです。 参考記事: 「健康的な肥満」 でも認知症のリスク

2型糖尿病の患者おいてもこの「肥満のパラドクス」が存在すると言われてきました。 複数の小規模な研究で、2型糖尿病の患者においては少し太り気味のほうが生存率が高いことが示唆されていたのです。

しかし、"New England Journal of Medicine"(2014年1月)に掲載されたハーバード大学の研究で、糖尿病患者における「肥満のパラドクス」が否定されました。 すなわち、太っている糖尿病患者の生存率が高くなっておらず、さらに、とても太っている糖尿病患者では生存率が下がっていたのです。

この研究では、医療関係の仕事に就いている男女であって糖尿病と診断された 11,427人をBMI に応じて複数のグループに分類して、死亡率と照らし合わせました。 15年間にわたる追跡調査の期間中の死亡者数は 3,083人でした。

BMI と死亡率を照らし合わせたところ、BMI と死亡率のグラフは、"J" の字を描いていました。 "J" の字の底の部分に当たる最も死亡率が低かったグループは、BMIが22.5~25のグループで、BMIがそれより高いグループでも低いグループでも死亡率が増加していました。

少し過体重のグループでは死亡率が有意には増加してはいませんでしたが、減ってもいませんでした。

65才未満で糖尿病と診断された患者および喫煙歴の無い患者では BMIと死亡率が直接的な相関関係にありました(BMIが高いほど死亡率が高かった)が、65歳以上になってから糖尿病と診断された患者、あるいは喫煙者の患者の場合には、BMI と死亡率が直接的な相関関係にはありませんでした。

直接的な相関関係が見られなかった理由としては、それぞれ以下が考えられます:

  • 喫煙者の場合は、喫煙によって体重が減少するうえに、喫煙によって様々な病気による死亡率が増加するため(この研究でも喫煙者は全般的に死亡率が高くなっていた)。

  • 高齢者の場合は、糖尿病以外に多数の病気を抱えていることが多いために(それによって体重が減るので)。
今回の研究では、少しの過体重であれば死亡率はさほど増えないという結果になりましたが、他の多くの研究では少しの過体重でも高血圧や高コレステロールなどの健康問題の原因となることが示されています。