高脂肪食で肥満すると脳が脳を食べるために認知能力が衰える

(2015年11月) "Brain, Behavior, and Immunity" 誌に掲載されたジョージア医科大学の研究(マウス実験)で、高脂肪食により肥満するとミクログリア(脳の免疫細胞)がニューロン同士を結合するシナプスを食べるようになることが明らかになりました。

太らせる実験
方法

雄マウスを2つのグループに分けて、一方のグループには脂肪分(飽和脂肪)が10%の普通のエサを、そしてもう一方のグループには脂肪分が60%という高脂肪のエサ(ファーストフードに相当する)を与えるという実験を行いました。

試験開始から4週目・8週目・12週目に以下を計測しました:
  1. 体重・食事量・インスリン値・血糖値などの代謝的な項目
  2. 海馬(学習と記憶を司る脳の領域)に存在するシナプスの数の指標となるタンパク質の量
  3. ミクログリアが活性化したときに生産する炎症性サイトカインの量
結果

試験開始から4週目の時点では、すべての数値において両グループに違いはありませんでした。 8週目にも高脂肪食のグループが太った以外に変化はありませんでした。

しかし12週目の時点では高脂肪食グループは完全に肥満し、サイトカインの量が増加する一方でシナプスの数と機能を示すタンパク質の量が減っていました。
高脂肪のエサを与えられたグループではエサを食べる量が減ったために、実際の摂取カロリーは普通のエサのグループと同程度でした。 このことから、摂取カロリーというよりは栄養の成分構成が問題なのだと思われます。
肥満がもたらすミクログリアの異常

免疫細胞の一種に死んだ細胞や病原体などを食べるマクロファージという白血球がありますが、正常なミクログリアは脳内においてマクロファージと同じような働きをすることによってニューロンの機能と健康を維持します。

肥満のマウスでは過剰な体脂肪が慢性炎症を生み出し、それがミクログリアの自己免疫応答(シナプスを食べること)を促進しているように見受けられました。

常にあちこちを移動して活動を続けるはずのミクログリアが移動も本来の活動も停止し、一箇所にとどまってシナプスを食べることに専念していたのです。 そうしてミクログリアにシナプスを食べられたマウスでは学習効率が落ちていました。
脳が発達する過程においてはミクログリアがシナプスを食べることがありますが、それは不要なシナプスを間引くためであり脳の機能向上にとって有益です。 肥満のマウスにおいてミクログリアは必要なシナプスまで食べていました。
体重を元に戻す実験
方法

12週目の計測が終わってから、高脂肪食グループのマウスの半数においてエサを低脂肪のものに切り替えてみました。

結果

低脂肪食に切り替えたグループは2ヶ月でグループの体重が正常に戻り、それに伴って認知能力の低下傾向に歯止めがかかりました。

研究者は次のように述べています:
「肥満マウスではミクログリアがシナプスを食べるためにシナプスが失われ認知障害が促進されていましたが、低脂肪食に戻すことで体脂肪率が完全に元に戻っていなくても脳における細胞的なプロセスが完全に逆転して認知機能が維持されました」
一方、12週目以降も高脂肪食を続けたグループは太り続け、炎症がさらに増加し、シナプスがさらに失われ続けました。