高齢になるにしたがって精神的な健康状態が改善してゆく

(2016年8月) 「年を取ると頭も身体も衰えるので気持ちも暗くなる」 というのが世間一般の認識ですが、"Journal of Clinical Psychiatry" に掲載されたカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究によると、人は高齢になるほどに精神的な健康状態(*)が改善してゆきます。
(*) 幸福感だけでなく、人生に対する満足感が高いことや、ストレス・不安感・抑鬱が少ないことも含む。
研究者は次のように述べています:
「精神的な健康状態は加齢にしたがって着実に改善されていました。 1年ごとという単位でも、10年ごとという単位でも、年を取るほどに精神的な健康状態が改善されていたのです」
研究の方法

無作為に選出された21~100才の米国人男女 1,500人超の心身の健康状態および認知機能を検査しました。 男女の比率はほぼ同じでした。

結果

年齢が高くなるほどに精神的な健康状態が良くなっていました。 身体機能と認知機能において最も高齢のグループは最も若いグループに比べて明確に劣っていたにも関わらず、精神的な健康状態は最も高齢のグループのほうが明らかに良好でした。

解説
考えられる理由

高齢者のほうが精神的な健康状態が良好である理由は不明ですが、これまでの研究によると、年を取っている人のほうが人生経験ゆえにストレスとの付き合い方や感情の処理が上手であるという可能性が考えられます。 例えば、ネガティブな気持ちや記憶をいつまでも心に溜め込んでおかない、本当に大切なこと以外では思い悩まないといった具合です。

その一方で、精神的な健康状態を維持できない人は高齢になるまで生きていられないために、高齢になるまで生き残った人は精神的な健康状態が良好であるという可能性も考えられます。

人生の幸福度はU字型?

これまでに行われた類似研究の大部分でも、認知症を除けば高齢者の精神衛生状態が比較的良好であることが示されていますが、これらの研究の中には、人生における精神的な健康状態の程度が、生まれてから死ぬまでの間にU字型のグラフを描くという結果になったものも存在します。

すなわち、子供の頃と老人の頃に精神的な健康状態が良好で、心身の機能的に最も充実している青年期から中年期にかけて精神的な健康状態が落ち込む(45~55才頃がどん底)というわけです。

ただし、今回の研究ではこのようなU字型のグラフとはならず、年を経るごとに右肩上がりに精神的な健康状態が改善してゆきました。 今回の研究でストレス・抑鬱・不安感が最も強かったのは20~30代の人たちであり、研究チームは老年期の人たちよりも若年者の精神衛生を懸念しています。