オメガ3脂肪酸は前帯状回に作用して脳の老化を防ぐ?

(2015年5月) "Frontiers in Aging Neuroscience" に掲載されたイリノイ大学の研究で、加齢による認知機能の衰えを防ぐのにオメガ3脂肪酸が有効である理由が調査されています。
Zamroziewicz MK, Paul EJ, Rubin RD and Barbey AK (2015) Anterior cingulate cortex mediates the relationship between O3PUFAs and executive functions in APOE e4 carriers. Front. Aging Neurosci. 7:87. doi: 10.3389/fnagi.2015.00087 (Licensed under CC BY 4.0)
オメガ3脂肪酸と認知機能

過去の複数の研究で、オメガ3脂肪酸が認知機能の老化に対抗するのに有効であることが示されています。 オメガ3脂肪酸はニューロン膜の構成成分であるほか、抗炎症作用や抗酸化作用などにより神経保護作用を発揮すると思われます。

これまでに、オメガ3脂肪酸が認知的柔軟性の維持に有益であることを示した研究と前帯状回が認知的柔軟性に関与していることを示した研究が別々に行われていますが、オメガ3脂肪酸・認知的柔軟性・前帯状回の3つを統一的に調べた研究は行われていませんでした。
研究の方法
この研究では、アルツハイマー病のリスク要因として知られる APOE e4 という遺伝子変異体を有しているが認知機能に問題が生じていない65~75才の高齢者40人を対象に、認知的柔軟性(*)の検査、血液検査、および脳のMRI(磁気共鳴画像)検査を行いました。

(*) 認知的柔軟性(cognitive flexibility)とは複数の作業間の切り替えを効率的に行う能力のことで、実行機能(executive functions)の1つです。 実行機能とは(統一的な定義は未だ存在しませんが)、計画立案能力・判断力・抽象的思考力・問題解決能力・注意力・感情抑制力などです。

将来的に認知症になるリスクを判定するには、記憶力のテストよりも認知的柔軟性などの実行機能のテストの方が適しています。

血液検査ではオメガ3脂肪酸であるEPAとDHAの血中濃度を調べ、MRI検査では認知的柔軟性に関与する「前帯状回」という脳の領域のサイズを調べました。 認知的柔軟性の検査には "Delis-Kaplan Executive Function System Trail Making Test" と呼ばれるテストを用いました。

結果

DHAおよびEPAの血中濃度が高かったグループは血中濃度が低かったグループに比べて、認知的柔軟性テストの成績が優れており、左前帯状回の灰白質の容積が大きくなっていました。 この結果から、オメガ3脂肪酸が前帯状回に作用して認知的柔軟性を維持する効果を発揮している可能性が考えられます。

研究チームは、脳の老化による機能低下を防ぐのにオメガ3脂肪酸が有効かもしれないと述べています。