オメガ3脂肪酸に高齢者の認知機能を維持する効果は無い

(2015年8月) "Journal of the American Medical Association" に掲載された米国立衛生研究所の研究で、オメガ3脂肪酸のサプリメントで高齢者の認知機能の低下を遅らせられないという結果になりました。出典: NIH Study Shows No Benefit of Omega-3 Supplements for Cognitive Decline

研究の内容
今回の研究では、加齢性黄斑変性(AMD)を患っている(*)高齢者4千人(平均年齢72才、58%が女性)を5年間にわたり追跡調査するという臨床試験を行いました。 今回の試験はこれまでで最大の規模です。
(*) AMDに対する各種サプリメントの効果を調べた試験の被験者に今回の試験にも参加してもらったため。 AMDは失明の原因ともなる眼病です。
被験者たちは次の4つのグループに分けられました:
  • プラシーボを服用するグループ。
  • オメガ3脂肪酸(DHAを350mg、EPAを650mg)を服用するグループ。
  • ルテインとゼアキサンチン(どちらも葉野菜に豊富に含まれる)を服用するグループ。
  • オメガ3脂肪酸およびルテインとゼアキサンチンを服用するグループ。
被験者はAMDを患っていたので希望者には研究チームが考案した「AREDS」と呼ばれるサプリメントも提供されました。 AREDSの成分は数種類の抗酸化物質とミネラルで、過去の試験においてAMDの進行抑制に効果を発揮しています。
認知機能のテストは5年間にわたる服用期間の開始前と、服用期間開始から2年後および4年後に行われました。 テストの検査項目は即時想起・遅延想起(*)・注意力・記憶力・処理速度などでした。
(*) 遅延想起(delayed recall)覚えたことを数分~数日後(他のことに気を取られたのち)に思い出す能力ということのようです。 即時想起(immediate recall)は直ちに思い出す能力なのでしょう。 記憶力(memory)との違いは不明です。
結果

いずれのグループでも認知機能テストの成績の低下幅は同程度でした。 したがってオメガ3脂肪酸に(もルテインやゼアキサンチンにも)認知機能を維持する効果は無いと思われます。 ただし研究者によると、例えば初期のアルツハイマー病などに有効である可能性は残っています。

類似研究

2011年に発表された大規模な研究でも、オメガ3脂肪酸のサプリメントに心臓疾患を抱えている高齢者の脳の健康状態を改善する効果は無いという結果になっています。

マウス実験ではオメガ3脂肪酸の一種であるDHAによりアルツハイマー病に見られるβアミロイド(脳に蓄積する有毒なタンパク質)のプラークが減少することが確認されていますが、軽~中等症のアルツハイマー病患者を被験者として行われた臨床試験ではアルツハイマー病の症状改善にDHAは効果が無いという結果になっています。