ガンの予後が良好であることを示すと考えられていたp21なのに...

(2016年7月) "Nature Cell Biology" 誌に掲載されたマンチェスター大学などの研究により、ガンの予後が良好であることを示すと過去20年間にわたり考えられていたp21と呼ばれる分子に良くない面もあることが明らかになりました。

これまでの認識
p21(正式名称: p21WAF1/Cip1)は、腫瘍の抑制において重要となるp53という分子との関わりがしばしば指摘されていることから、p21の存在は腫瘍の侵攻性(*)が弱いことを示す良いサインだと考えられてきました。
(*) 腫瘍の増殖の速さ。
今回わかったこと

p53が機能せずp21だけが単独で機能する腫瘍では、p21が腫瘍の成長・転移能力を劇的に増大させていました。

p21は、DNA複製のメカニズムを暴走させて複製ストレス(replication stress)と呼ばれる状態を引き起こします。 複製ストレスによってゲノム(1組の染色体)が不安定になりますが、ゲノムが不安定なこの状態こそがガンの特徴なのです。

コメント
研究者は次のように述べています:

「野生型p53(wild type p53)の活性が失われている状況においては、p21が過剰に生産されるのは有害です。 p53にコントロールされていないとき、p21は侵攻性が強い腫瘍に見られる細胞複製の危険な兆候を引き起こす要因となります」

「これまで良いものだと考えられてきたp21ですが、良くない性質も備えているようです。 ただ、今回の発見を利用した新しい治療法が開発されることも期待できます」