寄生虫が腸内細菌を介して炎症性腸疾患(IBD)を抑制

(2016年4月) 寄生虫が炎症性腸疾患(IBD)の治療に有効であると以前から言われていますが、"Science" 誌に掲載された NYU Langone Medical Center などの研究によると、寄生虫とIBDの関係の間には腸内細菌が介在していると思われます。出典: Worm Infection Counters Inflammatory Bowel Disease by Drastically Changing Gut Microbiome

寄生虫感染により引き起こされる免疫応答によって腸内細菌叢に変化が生じ、それによりIBDの症状が改善されるのではないかというのです。
参考記事
マウス実験
方法

IBDなどの免疫不全疾患に関与するNOD2という遺伝子を持たない(*)マウスの一群に、鞭虫という寄生虫の卵をマウス1匹につき10~15個飲ませました。

そして卵から孵化した鞭虫が成熟したのちに、マウスの腸や糞便中に存在するバクテロイデス菌(†)とクロストリジウム菌(‡)の量とIBDの有無との関係を調べました。

(*) おそらく、それゆえにIBDになりやすい。

(†) IBDのリスクを増加させると言われている。

(‡) 炎症を抑える作用が知られている。
結果

鞭虫に寄生されたマウスではバクテロイデス菌の量が千分の1ほどにも減る一方で、クロストリジウム菌の量が10倍に増えていました。 そして、この腸内細菌叢の変化に伴ってIBDの症状(腸の出血や潰瘍)の多くが消滅していました。

寄生虫に対して生じる免疫応答によりクロストリジウム菌の増殖が促進され、それによってバクテロイデス菌の勢力が衰えるのではないかと考えられます。 バクテロイデス菌の勢力が衰える理由としては、勢力を増したクロストリジウム菌に栄養分を奪われるから、あるいはクロストリジウム菌が放出する毒素がバクテロイデス菌にとって有害となるからというものが考えられます。
今回の結果は、多発性硬化症・リウマチ・1型糖尿病などの自己免疫疾患の治療にも利用できる可能性があります。
マレーシア辺境での調査

今回の研究の一環として寄生虫感染率が高くIBD罹患率低いことで知られているマレーシアの辺境地域に住むオラン・アスリ族の人たち(75人)の腸内細菌叢を調べたところ、マレーシアの都会に住む人たち(20人)に比べてクロスリジウム菌が多くバクテロイデス菌が少ないことが明らかになりました。

ただし、オラン・アスリ族の人であっても寄生虫感染症を治療している場合にはクロスリジウム菌が少ない一方でバクテロイデス菌が多くなっていました。