パーキンソン病が自己免疫疾患である可能性

(2014年4月) "Nature Communications" 誌に掲載されたコロンビア大学の研究によると、パーキンソン病には自己免疫疾患という側面もあるかもしれません。 1型糖尿病やセリアック病、多発性硬化症のように免疫系が自分の体(パーキンソン病の場合はニューロン)を誤って攻撃しているかもしれないというのです。

今回の結果が今後の研究で確認されれば、パーキンソン病を自己免疫疾患として扱うことでニューロンの死滅を予防する方法が開発される可能性があります。

従来の認識

神経生物学の世界では過去数十年間にわたって、免疫系がニューロンを攻撃することは無いと考えられてきました。 その理由の1つは、「ニューロンの細胞表面には抗原が表れないから」というものです。 大部分の細胞は、ウイルスや細菌に感染すると外層表面に抗原がいくつも表れます。 そして、免疫系がこの抗原を認識すると、T細胞が抗原の出ている細胞を攻撃して殺します。 ニューロンの表面には抗原が表れないために、T細胞がニューロンを攻撃することはないと考えられていたのです。

研究者は次のように述べています:
「この考えは理に適っています。 というのも、一部の稀な状況の除いて、免疫系によって殺されたニューロンを脳は補充できないからです。 ところが、今回の研究で、ニューロンの中に抗原が表れるものが複数種類存在することが思いがけず明らかになりました」
研究の内容

細胞に表れる抗原には MHC と呼ばれる特殊なタンパク質が存在しますが、今回の研究で、健康だったドナーに提供された死後の脳組織を調べたところ、2種類のニューロンで MHC-1 が見つかりました。 そして、この2種類のニューロン(そのうちの1つは「黒質」と呼ばれる脳の領域に存在するドーパミン・ニューロン)というのが、パーキンソン病において変性が見られるニューロンだったのです。

さらに、MHC-1 のニューロンにおける役目が抗原の表示であることを確認するため、マウスのニューロンと幹細胞から作ったヒトのニューロンを用いた生体外実験を行ったところ、一定の状況下(パーキンソン病の患者に見られる状況を含む)においてニューロンが MHC-1 を用いて抗原を表しました。 様々な種類のニューロンを試験した中でも、パーキンソン病で変性が見られる2種類のニューロンが他のニューロンよりも突出して、抗原の表示を引き起こす信号に対する反応性が高いという結果でした。

研究チームはさらに、特定の(MHC-1 を用いて)抗原を表すニューロンを T細胞が認識して攻撃することも確認しました。

このようにパーキンソン病が部分的には自己免疫疾患であるという可能性が出てきましたが、研究者は、①今回の生体外実験が示されたのと同じことが生きている人体でも実際に起こっていることや、②パーキンソン病の患者において T細胞によるニューロン攻撃が発生していることを今後の研究によって確認する必要があるとしています。