(2014年12月) "Psychoneuroendocrinology" 誌に掲載されたノッティンガム大学などの研究で、免疫系と性格の関係が調査されています。
遺伝子の発現とは、遺伝子の設計図に基づいて体内でタンパク質が作られることです。
被験者となったのは、18~59才(平均年齢24才)の健康な男女121人でした。 121人のうち86人が女性、BMI の平均は24で、人種は様々でした。
被験者を対象に、神経質・外向性・開放性・協調性・勤勉性(*)の程度を測る性格診断テストと喫煙・飲酒・運動などの生活習慣に関するアンケートを実施し、遺伝子の発現量を調べるための血液サンプルを採取しました。(*) それぞれ、"neuroticism"、"extraversion"、"openness"、"agreeableness"、および "conscientiousness" を訳したもの。 "The Bass Handbook of Leadership: Theory, Research, and Managerial Applications " という本によると、"agreeableness" とは他人を信頼する、他人に親愛の情を持つ、善良である、正直である、利他的であるといった性質のことです。 同じくこの本によると、"conscientiousness" は勤勉で責任感があり意欲的な性質のことです。
東京大学情報基礎センターの文書(http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tanno/big_five_paradigm.pdf、リンク切れ)では、神経症傾向(Neuroticism)、外向性(Extraversion)、開放性(Openness to experience)、協調性(Agreeableness)、統制性(Conscientiousness)と訳されています。 これら5つを併せてNEOACと呼ぶそうです。「炎症を誘発する遺伝子の発現量が、外向性が強い人では有意に増加している一方で、小心さが強い人では少なくなっていました」
「このことから、社交的な性質ゆえに感染症のリスクが増加する(外向的な)人では免疫系が感染症に対応しやすくなっているのだと思われます。 逆に、警戒心が強い、あるいは小心な性質であるが故に感染症のリスクが低い人では免疫系の感染症への対応力が劣っていました」
「ただし、因果関係が逆である可能性もあります。 すなわち、感染症への対応力の優劣によって性格が決定されているという可能性です」「開放性」が強い人でも、炎症を誘発する遺伝子群の発現量が少ない傾向(trend)にありました(ただし統計的に有意となるほどではない?)。
抗ウイルス/抗体関連の遺伝子群の発現量と5つの性格との間には有意な相関関係が見られませんでした。 「神経質」と「同調性」は、2種類の遺伝子群のいずれとの間にも相関関係が見られませんでした。
これらの結果は、生活習慣などの要因を考慮したうえでのものです。