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先進国に見られる程度の大気汚染でも脳が萎縮し脳卒中のリスクも増加

(2015年4月) 先進国に見られる程度の大気汚染でも脳卒中のリスクが増加することが知られていますが、"Stroke" 誌に掲載されたハーバード大学などの研究により、この程度の大気汚染に長期間にわたってさらされた中年以降の人たちでは脳が萎縮して認知機能が損なわれる恐れもあることが明らかになりました。

研究の方法

この研究では認知症や脳卒中の病歴が無い60才以上の男女900人超のデータを用いて、大気汚染が脳の健康に及ぼす悪影響について調査しました。

データに含まれていたのは、交通量の多い道路から自宅までの距離・PM2.5(*)への長期的な暴露量(人工衛星の画像による)と、MRI(核磁気共鳴画像法)検査で計測した脳のサイズ・海馬(記憶を司る脳の器官)のサイズ・白質病変部(White Matter Hyperintensity、"WMH")のサイズでした。 WMHのサイズは、未だ症状が出ていない脳梗塞や脳の老化の指標として用いられます。

(*) PM2.5とは粒子径が2.5μm以下の粒子状物質(Particulate Matter)のことで、日本語では「微小粒子状物質」とも呼ばれます。 PM2.5の発生源は火力発電所や、工場、自動車、バイク、焚き火~森林火災などです。(参考記事: 焚き火の煙が心血管にも悪影響

PM2.5はサイズが小さいので、肺の奥深くにまで入り込みます。 複数の研究でPM2.5と心臓発作や脳卒中による入院患者数の増加との関係が指摘されています。
結果
PM2.5の大気中濃度が2μg/m増えるだけでも、脳全体のサイズが0.32%小さくなり、症状が出ていない脳梗塞が発生しているリスクが46%増加していました。 2μg/mというのは、米国のニューヨーク市などの大都会で普通に見られる程度の大気汚染でした。 脳のサイズの0.32%の縮小というのは、約1年分の老化に相当します。
症状が出ていない脳梗塞(covert brain infarcts)は、後に脳卒中になる(脳梗塞の症状が表面化する)リスクだけでなく、認知症・歩行障害・抑鬱のリスクが増加する原因にもなります。
研究者は次のように述べています:
「今回見られた脳の老化が大気汚染によるものだとして、そのメカニズムは未だ不明ですが、肺に蓄積したPM2.5により生じる全身性の炎症が関与している可能性があります」