大気汚染も肝線維症のリスク要因

(2015年9月) 大気汚染が肺や心臓・血管の健康に悪影響を及ぼすことは知られていますが、"Journal of Hepatology" に掲載されたウェイン州立大学(米国)などの研究によると、大気汚染は肝臓にも悪影響があります。 マウス実験により、PM2.5と呼ばれる大気汚染物質が肝線維症を引き起こすことが確認されたのです。 出典: Scientists Discover Mechanism for Air Pollution-Induced Liver Disease
予備知識
肝線維症
肝線維症とはウイルス感染・肥満・飲酒・自己免疫疾患などで肝臓がダメージを受けた後に生じる傷跡のようなものです。肝線維症は慢性肝疾患のほとんどに生じ、進行すると肝硬変や肝不全になります。 肝硬変は肝臓ガンの原因となりますが、治療や状況の改善により「肝硬変 ⇒ 肝線維症 ⇒ 健康な肝臓」という段階を踏んでの回復が可能です。

PM2.5

PM2.5とは粒子径が2.5μm以下の粒子状物質(Particulate Matter)のことで、日本語では「微小粒子状物質」とも呼ばれます。

PM2.5の発生源は火力発電所・工場(ディーゼルとガソリン両方)・自動車・バイクの排気ガス、道路・タイヤ・ブレーキの磨耗により生じる粉塵、焚き火~森林火災などです。PM2.5は交通や産業活動が活発な地域における主要な大気汚染物質であり、そのような地域に住む人全員の健康に大きく影響します。

PM2.5はサイズが小さいので、肺の奥深くにまで入り込んで有害性を発揮します。 PM2.5は心臓発作・脳卒中・代謝病(肥満や糖尿病など)のリスク要因です。

研究の内容
肝線維症の発生

この研究ではまず、マウスの一群を10週間にわたって(1日のうちの)短時間だけPM2.5に暴露させるという実験を行いました(PM2.5の濃度は実際にあるうる程度のものだった)。 その結果、マウスに肝線維症が生じました。

メカニズム

研究チームはさらに分子的・細胞的・病理的アプローチによる調査を行い、PM2.5を引き金として生じるストレスのシグナルを開始するストレス・センサーが細胞膜に存在し、このシグナルを伝達する物質が細胞の内側に存在することを明らかにしました。

PM2.5により引き起こされる炎症ストレス反応が、形質転換成長因子ベータ(TGFβ)によるシグナル伝達を活性化させることで肝臓におけるコラーゲンの蓄積(肝線維症の特徴)を促進していたのです。

コメント
研究者は次のように述べています:

「今回の研究により、PM2.5による大気汚染も肝線維症のリスク要因であることが示されました」

「都心部など大気汚染が問題となる地域に住む人については、医療機関が肝臓の状態をモニターして肝疾患を予防するための戦略を検討する必要があります」