所得格差は子供の脳の発達にも表れる④

(2015年7月) "JAMA Pediatrics" に掲載されたミシガン大学などによる研究で、世帯収入によって子供の脳の構造にも違いのあることが明らかになりました。出典: Delayed brain development in the poorest children linked to lower educational achievement

これまでの研究で世帯収入と子供の学業成績とのあいだに関係のある(貧乏家庭の子供は成績が悪い)ことが示されていますが、この世帯収入と学業成績との関係の原因は脳の構造の違いにあるのかもしれません。

研究の方法

4~22才の子供と青年389人の脳を6年間のうちに計3回(2年に1回)MRIでスキャンしました。 そして、世帯収入別に9つのグループに分けて、MRIスキャンの結果と照らし合わせました。

調査対象となった脳領域

子供の頃の学業成績と成人後の社会的な成功に関与する前頭葉・側頭葉・海馬が調査対象となりました。 前頭葉は注意力・感情の制御・複雑な学習などに深く関与しています。 側頭葉は記憶と言語理解に不可欠です。 海馬は空間的情報および文脈的情報の処理と長期記憶に関与しています。

結果
主な結果は次の通りです:
  • 世帯収入がFPL(*)の1.5倍よりも少ない家庭の子供では、灰白質の発達が3~4%低かった。 FPLよりも世帯収入が少ない世帯の子供では、この数字は7~10%だった。
    (*) 米国で貧困とみなされる世帯収入の基準金額(federal poverty level)。 2015年の時点では、3人家族で 20,090ドル、4人家族で 24,250ドルが基準金額。「世帯収入がFPLの1.5倍より少ない」というのは、年収が約3万5千ドルより少ないということになります。
  • 世帯収入がFPLの1.5倍より少ない家庭の子供は学力・知能検査の成績が4~8ポイント低かった。
  • 前頭葉と側頭葉の発達の遅れが、低所得世帯の子供の学業成績が悪い理由の15~20%を占めると思われる。
コメント
研究者は次のように述べています:

「脳の構造の中でも学習において非常に重要となる注意力の維持・計画能力・認知的柔軟性などに関与する部分が、貧困に伴う環境(ストレス・知的刺激の少なさ・栄養不足)に足を引っ張られるのだと思われます」

「しかしながら脳には順応性があります。 青年期に至るまでは良くも悪くも環境の影響を受けつつ発達を続けるのです。 脳の発達が遅れている子供であっても環境を変えることで遅れを取り戻せるかもしれません」