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脳卒中になった後には飲酒欲が高まる

(2017年6月) 脳卒中になった後には再発を防止するために飲酒を控えるように指示されることが少なくありませんが、"Scientific Reports" に掲載されたテキサスA&Mの研究によると、脳卒中が生じる脳領域によっては脳卒中になった後に飲酒に対する欲求が高まる恐れがあります。

脳卒中後に「飲酒を控えるように」という医師の指示が守られないことが多いのも、このためかもしれません。

研究の概要

ネズミを用いた実験で、脳に存在する中大脳動脈(*)に人為的に虚血性脳卒中(†)を引き起こしたところ、脳卒中の影響が脳の片側に限定されている場合にさえも、アルコールを好むようになりました。 水とアルコール飲料という選択肢を提示したときに、アルコール飲料を高確率で選択したのです。

(*) ヒトにおいて虚血性脳卒中が最も生じやすい血管の1つ。

(†) 血管が破れるのではなく詰まるタイプの脳卒中。脳卒中全体の85%を占める。

脳卒中のアルコール嗜好への影響は、脳卒中が生じてから5日目に始まり、少なくとも脳卒中から1ヶ月間は継続しました。

メカニズム

虚血性脳卒中により飲酒欲が高まるメカニズムは次のようなものであると考えられます:
  1. 虚血性脳卒中に伴う血管の閉塞により脳神経が必要とするグルコース(ブドウ糖)と酸素が欠乏する。
  2. グルコースと酸素の欠乏によって脳領域の一種である背外側線条体において神経細胞が死滅して、中脳における特定の神経細胞が興奮しやすくなる。
  3. 興奮しやすくなった中脳の神経細胞は、D1と呼ばれるドーパミン受容体にシグナルを伝達する。 研究チームの以前の研究で、D1受容体を備える細胞(背内側線条体に存在する)に動物を飲酒などに駆り立てる作用のあることが示されている。

対策

脳卒中で脳にダメージが生じたネズミであっても、D1受容体の働きを抑えるとアルコールを求める行動が減少しました。 現時点ではD1受容体の働きを抑える方法は確立されていませんが、そのような薬が開発されれば脳卒中後の飲酒欲を抑制できる日が来るかもしれません。