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診療所の待合室に置かれている雑誌が旧いものに偏る理由

(2014年12月) "British Medical Journal" クリスマス特別号に掲載されたオークランド大学(ニュージーランド)研究で、診療所の待合室に置かれている雑誌が旧(ふる)い日付のものに偏るという不可思議な現象の解明が進みました。

この現象の解明が急務であると考えた研究チームはまず、 Medlineや、Google Scholar、灰色文献(grey literature。 公式には発表されていない研究)などを調べてみました。

ところが、待合室のデザインや、待合室での待遇が患者の満足度に及ぼす影響などについての研究はあっても、待合室で新しい雑誌を見かけないという現象について調べた研究は見つかりませんでした。

ただ、待合室に置かれた雑誌について言及している論文の多くに「雑誌の大部分が旧い」という記述が存在することから、この現象が普遍的なものであるという確証を得ることは出来ました。

調査の内容
研究チームは、待合室の雑誌が旧いものに偏る理由として次の2つの仮説にたどりつきました:

  1. 診療所のスタッフが、そもそも旧い雑誌しか待合室に置かない。
  2. そこそこ新しい雑誌が置かれるけれど、新しいものが何故か消失する。
そこで、2つの仮説のいずれが正しいのかを突き止めるため、オークランド市にある診療所の待合室に合計87冊の雑誌を3つの山に分けて積み上げておき、雑誌の消失率を雑誌の種類および日付の新旧別に計測するという調査を行いました。
  • 雑誌の種類: 非ゴシップ誌(タイム誌およびエコノミスト誌)と、ゴシップ誌(*)、それ以外の雑誌 (ナショナル・ジオグラフィック誌やファッション雑誌など)の3種類に分類されました。
    (*) 表紙にセレブの写真が5つ以上掲載されているものがゴシップ誌と定義された。 訴訟沙汰になる恐れがあるため誌名は公表されていない。
  • 雑誌の新しさ: 表紙に日付が表示されていた82冊のうち、47冊が発行から2ヶ月が経っておらず、残りは発行から3~12ヶ月が経ったものでした。

各雑誌の裏表紙にはユニークな(一意の)番号を付し、雑誌の残存率は2週間ごとに計測しました。 次の3点を調査項目としました:

  1. どれくらいの率で雑誌が消失するのか?
  2. 日付が新しい雑誌と旧い雑誌のどちらが消失しやすいか?
  3. ゴシップ誌と非ゴシップ誌のどちらが消失しやすいか?
調査の結果
  • 調査が終了したのは開始から31日後で、この時点での消失率は47%(41冊/87冊)だった。 1日あたり1.32冊のペースで消失した計算となる。

  • 日付の新旧では、旧い雑誌よりも新しい雑誌の方が消失しやすいという結果だった(新しい雑誌の消失率が59%であったのに対して旧い雑誌は27%)。
  • 非ゴシップ系の雑誌に比べてゴシップ雑誌の方が14倍も消失率が高くなっていた。 調査期間中にエコノミスト誌とタイム誌(計19冊)が一冊も消失していなかったのに対して、ゴシップ誌(27冊)では消失せずに残っていたのがたった一冊だった。 この結果は統計学的に有意であるとみなされる。
  • 価格の安い雑誌ほど消失しやすいという傾向も見られた。

これらの結果から、診療所のスタッフが待合室に新しい雑誌を置かないわけでなく、新しい雑誌が消失しやすいのだと考えられます。 研究チームは今後、雑誌の消失に何が(あるいは誰が)関与しているのかを調べていく予定です。

新しい雑誌に限って待合室から消失する理由が何であるかはさておき、研究チームは今回の結果に基づいて、診療所のコスト削減を目的として待合室に置く雑誌を旧い日付のエコノミスト誌とタイム誌のみにすることを提唱しています。