(2017年6月) "2017 ASCO Annual Meeting" で発表された研究によると、早期の乳ガンの病歴がある女性が妊娠しても、乳ガンが再発するリスクが増加する心配はなさそうです。
妊娠と乳ガン
乳ガンは子供を産む年齢の女性が最もかかりやすいガンであり、近年では子供を産む時期が遅くなっているため、子供を産む前に乳ガンになる女性が少なくありません。
乳ガンと診断された若い女性の半数はアンケート調査において「子供を産むことに興味がある」と回答しているものの、乳ガンの治療を終了したのちに実際に妊娠にまで至る女性は10%未満に過ぎません。 あらゆるガンの中で乳ガンの病歴がある女性が最も病後に子供を産む率が低いというデータがあります。
これまで長らくのあいだ、特にER陽性の乳ガン患者で、妊娠により乳ガンが再発するリスクが増加するのではないかと懸念されてきました。 ER陽性の乳ガンは女性ホルモンであるエストロゲンにより勢いを増すため、妊娠中にエストロゲンが増加することによって、治療後にも体内に乳ガン細胞が残っている場合に、乳ガンがぶり返すのではないかと考えられてきたのです。
ER陽性の乳ガンでは乳ガンの手術を行ったのちにも5年~10年ほどは再発を防ぐために補助ホルモン療法を行うことが推奨されますが、妊娠を目指すとなると補助ホルモン療法を中止する必要があるのも懸念事項となります。
研究の方法
乳ガンと診断されたのちに妊娠した女性333人と妊娠しなかった女性874人とで乳ガンになるリスクを比較しました。
合計 1,207人の女性たちはいずれも50才未満で、非転移性の乳ガンでした。 1,207人のうち57%がER陽性の乳ガンの患者で、40%が腫瘍のサイズが大きかったり腋窩リンパ節へと乳ガンが広がっていたりと予後が良くないと思われる患者でした。
乳ガンと診断されてから妊娠するまでの期間は中央値で2.4年でした。 乳ガンと診断されてから妊娠するまでの期間は、ER陽性の乳ガンと診断された女性のほうが長くなる傾向にありました。
結果
乳ガンと診断されてからの約10年間(中央値)において、ERが陽性か陰性かにかかわらず、妊娠した女性と妊娠しなかった女性との間で無病生存率に違いがありませんでした。
ER陽性の乳ガンだった女性に限っても、妊娠した場合と妊娠しなかった場合とで無病生存率に差がありませんでした。 ER陰性の乳ガンだった女性に限ると、妊娠した場合のほうが妊娠しなかった場合よりも死亡リスクが42%低かったほどです。
妊娠してから無事に出産にいたった場合と流産した場合との比較や、乳ガンと診断されてから妊娠するまでの期間が2年以上の場合と2年未満の場合との比較、出産した子供を母乳で育てた場合と粉ミルクで育てた場合の比較(データは少なかった)でも、無病生存率に違いは見られませんでした。