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妊娠中の SSRI系抗鬱剤服用で自閉症児が生まれるリスクが増加?

(2014年4月) "Pediatrics" 誌オンライン版に掲載されたジョンズ・ホプキンス大学の研究で、妊娠中に SSRI系の抗鬱剤(プロザックや、パキシル、レクサプロ、ゾロフトなど)を服用すると、男の子が生まれた場合に自閉症スペクトラム障害(ASD)となるリスクが通常の3倍に増加するという結果になりました。

自閉症リスクの増加は特に、妊娠最初の3ヶ月間(第一トリメスター)における服用で顕著でした。 また、母親が SSRI系抗鬱剤を服用していた男の子では、発達が遅れるリスクも増加します。
SSRI と自閉症の関係

SSRI 系の抗鬱剤は、セロトニンというホルモンを増加させることで鬱症状を緩和しますが、妊娠中に服用した SSRI は、胎盤を通過して胎児にも作用しセロトニンの量を増加させます。

自閉症児の3人に1人でセロトニンの体内量が通常よりも多くなっていることから、過剰なセロトニンによって脳の回路に異変が生じ、その異変が自閉症の症状に関与しているのではないかと考えられています。
研究の詳細
研究方法
この研究では、966組の母子のデータを調査しました。 データに含まれていた子供の詳細は次の通り:
  • 子供の平均年齢は4才。
  • 800人近くが男児。
  • 自閉症の子供は500人ほど。
  • 何らかの発達の遅れがあった子供は154人。
  • 通常に発達していた子供は320人。
胎児のときに SSRI に暴露(妊娠中に母親が SSRI を服用)した子供の割合は次の通りでした:
  • 通常に発達していたグループでは3.4%
  • 自閉症の子供のグループでは5.9%
  • 発達に遅れが見られたグループでは5.2%
結果

男女を分けずにデータを見ると、(妊娠中の SSRI 服用により)自閉症と発達の遅れのリスクが増加するという(たぶん統計的に有意とまでは言えない)傾向が見られただけだったのですが、データを男女別に見ると、自閉症の男児では母親が妊娠中に SSRI を服用している率が3倍になっていました。

そして、自閉症の男児では、母親が妊娠最初の3ヶ月間(脳の初期の発達が行われる期間にあたる)のうちに SSRI を服用していた率が特に高くなっていました。

また、発達の遅れがある男児でも、母親が妊娠中に SSRI を服用していた率が3~5倍になっていました。 そして発達の遅れに関しては、妊娠27週目以降に SSRI を服用していた母親の率が特に高くなっていました。

女児に関しては、今回のデータに含まれている人数が少ないため何とも言えません。

専門家のコメント
"Montefiore Medical Center" に勤務する自閉症の専門家 Eric Hollander 博士は次のように述べています:
「妊娠中の SSRI 服用によって男児が自閉症となるリスクが増加することが今後の研究で確認されたとしても、自閉症になるリスクがそもそも低いので、3倍になっても大きなリスクとは言えません。 仮に、自閉症のそもそものリスクが1%だとすれば3%でしかありません」
Mount Sinai Kravis Children's Hospital に勤務する小児科医 Eyal Shemesh 博士は次のように述べています:

「この手の研究では様々な要因が絡み合うために、あまり明確な答えは出ません。 今回の研究にしても、男女混合では(女児の比率が少ないにも関わらず)妊娠中の SSRI 服用の影響は明確には出ていなかったわけです。 この研究だけでは、SSRI によって自閉症のリスクが増えるとは言えません。 今後の研究が必要です」

「そんなことよりも現時点で明らかなのは鬱が妊娠に悪影響を与えるということです。 したがって、欝は治療する必要があります。 治療の選択肢としては心理療法と薬物療法がありますが、どちらが良いかは医師と相談して合理的に決定してください。 今回のような研究の結果を見て薬物療法を中止する人がいるのではないかと心配しています」
類似研究
  • 2011年11月に "Archives of General Psychiatry" に掲載された研究では、妊娠中の SSRI 服用によって自閉症のリスクが2倍に増加するという結果になっています。 データに含まれる子供の数は300人足らずでした。 この研究でも、SSRI 服用による自閉症リスクの増加は、妊娠最初の3ヶ月間に服用した場合に顕著でした。
  • "Journal of Autism and Developmental Disorders" オンライン版(2014年5月)に掲載されたデンマークの研究でも、SSRI の服用によって自閉症のリスクが2倍に増加するという結果になっています。 この研究で75万人近くの子供のデータを分析したところ、妊娠中に SSRI を服用していた女性から生まれた子供では1.5%が自閉症だったのに対して、SSRI を服用していない女性から生まれた子供で自閉症だったのは0.7%でした。
  • 2013年12月に "New England Journal of Medicine" に掲載された研究では、妊娠中の SSRI 服用と胎児の自閉症リスクの間に有意な関係は見られませんでした。 こちらの研究では、4,000人の子供のデータを調査しました。
  • 2013年11月に "Clinical Epidemiology" 誌 に掲載された研究でも、妊娠中の SSRI 服用で自閉症児のリスクは増えないという結果になっています。