妊娠中のビタミンD

ビタミンDが妊娠に及ぼす影響

  • 陣痛軽減
    Cedars-Sinai Medical Center の研究で、ビタミンD血中量が少ない妊婦の方が麻酔の必要量が多いという結果になったことから、ビタミンD不足の解消が陣痛の軽減に有効だと思われます。
  • 胎児の発育
    ピッツバーグ大学が 2013年に発表した研究で、妊娠中にビタミンDが不足すると、①新生児の体重と頭囲(頭のサイズ)が不足し、②妊娠期間に比して新生児が小さくなるリスクが二倍になるという結果が出ています。
  • 胎児の脳の発達
    マウス実験ですが、妊娠前~妊娠中にビタミンDが欠乏していると胎児の脳の発達が損なわれるという結果になった研究があります。 ビタミンDが欠乏しているマウスでは、胎児の脳のサイズが小さいほか、言語能力に関する遺伝子にも異常が見られました。
  • 自閉症のリスク
    "BJ Psych Open" 誌(2017年)に掲載されたクイーンズランド大学などの研究では、4千人超の妊婦のビタミンD血中濃度を調査して、妊娠中にビタミンDが欠乏(血中濃度が25 nmol/L 未満)していると生まれる子供が自閉症になるリスクが2.4倍に増加するという結果になっています。
  • 胎児の筋力
    2014年の英国の研究によると、妊娠中にビタミンDを十分に摂っておくと、生まれてくる子供の筋肉が強くなると考えられます。 この研究では4才の時点での筋力を測定しただけですが、研究者によると、妊娠中の母親のビタミンD体内量は、生まれてくる子供の成人後の筋力にも影響する可能性があります。
  • 胎児の歯の健康
    妊娠中のビタミンD体内量と生後の子供の虫歯率とを照らし合わせた研究で、子供に虫歯が見つかった女性では、そうでない女性に比べて、妊娠中にビタミンDが不足している率が高いという結果になったものがあります。 胎内で歯が形成される時期にビタミンDが不足することによって胎児の歯のエナメル質に欠陥が生じ、そのために生まれた子供が虫歯になりやすくなっている可能性があります。
  • 生後の発達
    2012年に発表されたスペインの研究によると、妊娠中(妊娠4~6ヶ月)にビタミンDを十分に摂っていると、生後の発達テストの成績が良くなると考えられます。
  • 早産のリスク
    3,200人超の妊婦のデータを分析した研究で、ビタミンD血中量が最も少ないグループでは最も多いグループに比べて、早産のリスクが1.5倍に増加していた。
  • 妊娠合併症のリスク

    2013年に発表されたカナダのメタ研究(過去の複数の研究のデータを分析する)によると、妊娠中にビタミンDが不足していると妊娠合併症になるリスクと、新生児が低体重になるリスクが増加します。

    妊娠合併症のリスク増加率は、妊娠性糖尿病(妊娠中にかかる糖尿病)が49%、妊娠高血圧腎症(高血圧とタンパク尿)79%、細菌性膣炎(早産の原因となる感染症)が187%というものでした。 新生児が低体重となるリスクは85%の増加でした。
  • 重症妊娠高血圧腎症のリスク
    2014年に発表されたピッツバーグ大学の研究によると、妊娠開始初期の26週間のあいだにビタミンDが欠乏していると、重症妊娠高血圧腎症(preeclampsia)になるリスクが増加すると考えられます。 この研究で 3,700人の妊婦の血液を調べたところ、ビタミンDの血中量が十分な妊婦では重症妊娠高血圧腎症になるリスクが40%減少していたのです。

ビタミンDの補給について

基本的には日光で補給

ビタミンDは食品にも含まれていますが、日光が皮膚に当たることで主に補給されます。 日光に含まれる紫外線B波が皮膚に当たることでビタミンDが合成されるためです。

国立環境研究所(茨城県つくば市)の研究によると、冬の札幌でも76分間の日光浴で成人が1日に必要とする量のビタミンDを作れます。 スペインのバレンシアで行われた研究では、真冬の1月に 1,000IUのビタミンDを得るには130分間の日光浴が必要だという結果になっています。

十分なビタミンDを得るのに必要となる日光浴の時間は、服装(長袖か半袖かなど)や姿勢の影響を受けるので、日光にさらされる皮膚の範囲が狭ければ必要となる日光浴の時間が長くなります。

ビタミンDとビタミンB9のトレードオフ

日光に当たりすぎてもビタミンDが過剰に作られる心配はないと思われますが、妊娠前や妊娠中には日光によるビタミンB9(葉酸塩)不足が懸念されます。 "Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology"(2014年)に掲載されたオーストラリアの研究で18~47才の女性45人を調査したところ、日光に当たる時間が過剰な女性はビタミンB9の血中濃度が最大で20%少なく、妊娠中に推奨されるビタミンB9血中濃度を割り込んでいたのです。

ビタミンB9は胎児の正常な発達に不可欠で、妊娠中にビタミンB9が不足すると、流産のリスクや生まれる子供が神経管奇形(二分脊髄など)になるリスクが増加します。 ビタミンB9の不足も生まれる子供が自閉症となるリスクに影響している可能性があり、"JAMA"(2013年)に掲載された研究で、妊娠前から(*)ビタミンB9のサプリメントを服用していると生まれる子供が自閉症と診断されるリスクが40%近く低いという結果になっています。
(*) 妊娠中から葉酸の服用を開始した場合には自閉症のリスクに差は出なかった。

サプリメント

そういうわけで、妊娠前~妊娠中にはビタミンDを日光ではなくサプリメントで補給するのが良いかもしれません。 特に、ベジタリアンである場合や日焼け止めを常用している場合にはビタミンDが不足しがちなので、サプリメントの利用を検討しましょう。 ただし、妊娠中にサプリメントを飲み始める前には必ず医師に相談しましょう。