就学前の子供の ADHD 治療に薬物を安易に使い過ぎ

米国小児科学会(AAP)のガイドラインでは、就学前の子供の注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療において、行動療法を第一線治療(まず最初に試す治療)とし、行動療法が効を奏しない場合にのみ薬物治療を行うことを推奨していますが、ニューヨークの小児向け医療機関の研究によると、就学前の子供の ADHD の診断・治療に従事する小児科医や小児精神科医、神経科医(以下、「小児ADHD医師」)の90%が、このガイドラインに従っていません。

この研究ではさらに、小児ADHD医師の20%以上が、薬物療法のみ、あるいは薬物治療と行動療法の併用を第一線治療として薦めていることも明らかになりました。 そのうえ、薬物治療が必要となるときに使用する薬物として AAP ではメチルフェニデートを推奨しているのに、小児ADHD医師の1/3以上がアンケートで、メチルフェニデート以外の薬物(アンフェタミンが19.4%、非興奮系の薬剤が18.9%)を「しばしば」あるいは「頻繁に」使用していると回答していました。

研究者は次のように述べています:

AAPのガイドラインに従わない小児ADHD医師が、こんなにたくさんいる理由はわかりません。 AAP では ADHD ガイドラインの対象年齢を広げているため、幼稚園に入園する前の幼児が ADHD と診断されるケースも今後増えると考えられます。 小児ADHD医師は、行動療法を第一線治療として薦めるべきです。



別の研究者も次のように述べています:

ADHD の子供に対する過剰投薬が社会的および医学会的に懸念されているというのに、多くの小児ADHD医師が第一線治療の計画に薬物療法を盛り込んでいるのは一体どういうことでしょうか。


ADHD 治療薬の使用量が10年で5倍に
過去10年間で ADHD の治療に使われた薬の量が5倍に増加したという研究結果もあります。 500%という増加ペースは、小児用の他の精神疾患の治療薬を遥かに上回ります。

この研究は、デンマークで生まれた子供85万人以上の医療記録を調査したもので、"Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology"(2013年9月)に掲載されました。

1990~2001年においては、1種類以上の ADHD 用の処方薬(メチルフェニデート、デクスアンフェタミン、アトモキセチン)を処方されていたのは、ADHD の子供の61%、自閉症の子供の16%、およびその他の精神疾患のある子供の3%でした。

そしてこれらの数字を、2003~2010年のものと比較すると、処方された薬の数が5倍に増加していました。 6~13才の子供における ADHD処方薬の使用量が、ADHD では4.7倍、自閉症では6.3倍、その他の精神疾患では5.5倍になっていたのです。

61%の4.7倍というと100%を遥かに超えてしまいますが、一人の ADHD 患者に対して複数の薬が処方されるケースが増えたか、投与期間が長くなった、あるいはその両方ということでしょうか。

2006年からは向精神系薬の処方率が減少傾向に
"Pediatrics" 誌(2013年9月)に掲載された米国の研究によると、子供への抗精神病薬、刺激薬、抗鬱剤の処方が2005年頃に急増した後、2006~2009年にかけて減少に転じています。

この研究で、1994~2009年に収集された2~5歳児 43,500人分のデータを分析したところ、医師に向精神系の薬を処方される率が1994~1997年には1%、1998~2001年には0.8%、2002~2005年には1.5%、2002~2009年には1.0%でした。

向精神系薬の処方率が落ちた原因について、研究グループは、向精神系薬の副作用の可能性が周知されたからではないかと考えています。 2004年には米国食品医薬局(FDA)が、子供における抗鬱剤の使用と自殺リスクの関係に関して強い警告を発しています。