前立腺に炎症がある人では、逆に前立腺ガンのリスクが低下

これまでの研究によると、慢性的な炎症は数種類のガンの原因であり、成人に生じるガンの20%が慢性炎症に起因していると考えられますが、"CANCER" 誌(2013年12月)に掲載された研究によると、前立腺に炎症がある男性では前立腺ガンのリスクが減る可能性があります。

この研究ではまず、前立腺に炎症の増加が見られるがガンではない(生検で陰性だった)50~75才の男性 6,238人を対象に行われた臨床試験の後ろ向き調査(retrospective analysis)を行いました。 そして、その2年後および4年後の2回にわたって生検を繰り返しました。

その結果、前立腺の炎症が多い患者のほうが前立腺ガンのリスクが低いことが判明しました。

この結果から、前立腺の生検を行ったときに、炎症が見られるがガンは無いという状態であれば、後に前立腺ガンになるリスクが低いと考えられます。

前立腺の炎症によって前立腺ガンのリスクが低減される理由として、研究グループは「免疫監視(immunosurveillance)」を挙げています。 免疫系がガン細胞を有害な異物として認識するために炎症を起こして、ガン細胞が腫瘍として定着する前に排除しているのではないかと言うのです。

別のソース(英文)によると、前立腺の炎症による前立腺ガンのリスク減少度は25~30%(初回の生検の結果に基づく数字)。 そして、3回目の生検においては、急性の炎症のあった人でのみ前立腺ガンのリスクが減少していました。

(文中の「前立腺の炎症(inflammation in prostate)」とは前立腺炎のことなんでしょうか? 「前立腺炎」は和英辞典では "prostatitis" あるいは "inflammation of the prostate" となっています。

前立腺炎には細菌性のものと非細菌性のものがあるので、「前立腺の炎症」の原因がガン細胞が原因だから「前立腺炎」ではないということは無さそうですが。)
前立腺の炎症で前立腺ガンのリスクが増加するという研究も
" Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention"(2014年4月)に掲載されたジョンズ・ホプキンス大学の研究では、良性の前立腺組織(benign prostate tissue)に慢性炎症がある男性では、良性の前立腺組織に炎症が無い男性に比べて、前立腺ガンであるリスクが1.78倍(侵攻性の〔グリソン・スコアが7~10〕前立腺ガンであるリスクに限ると2.24倍)に増加するという結果になっています。
グリソン・スコア
前立腺ガン組織の顕微鏡観察に基づく悪性度の分類。 スコアの範囲は2~10で、スコアが高いほど組織の異常度が強く、腫瘍が拡がるリスクが高くなる。
この研究では、"Prostate Cancer Prevention Trial(PCPT)" という研究の被験者のうちプラシーボを服用したグループの男性のうち、前立腺ガンのある191人と前立腺ガンの無い209人を対象に生検を実施しました。

少なくとも1つの組織サンプルで炎症の兆候が見られた人の率が、前立腺ガンのあるグループでは86.2%だったのに対して、前立腺ガンの無いグループでは78.2%でした。

PCPT に参加した被験者は、DRE が正常かつ PSA 3 ng/ml 以下の男性たち 18,882人(55才以上)でした。

研究者は「前立腺に炎症があるのは珍しくないため前立腺ガンの有無の判定に用いることはできない」と述べています。