ストレスを感じている高齢者で軽度認知障害のリスクが増加

(2015年12月) "Alzheimer Disease & Associated Disorders" 誌に掲載されたアルベルト・アインシュタイン医学校の研究で、心理的ストレスを慢性的に感じている高齢者は健忘性軽度認知障害(aMCI)になりやすいという結果になりました。
健忘性軽度認知障害
健忘性軽度認知障害(aMCI)は軽度認知障害(MCI)の中でも最も一般的で、記憶力の低下が特徴です。
研究の方法

米国在住でaMCIでも認知症でもないという70才超の高齢者507人のデータを入手し、その後平均3.6年間にわたり追跡調査を行いました。 データの内容は、神経心理学的な検査の結果・医療記録・日常の活動・記憶力に関する問題などでした。

ストレスの計測

ストレスの尺度としては、Perceived Stress Scale(主観的ストレス・スケール。「PSS」)と呼ばれ14項目から成るアンケートを用いました。

PSSでは、過去1ヶ月間の日常生活における慢性的なストレスの程度を計測します。 PSSのスコアの範囲は0~56点で、スコアが高いほど回答者本人が感じているストレスが大きいということになります。

結果
507人のうち71人が研究期間中にaMCIと診断されました。 ストレスが強かったグループでaMCIを発症する率が高くなっていました:
  • PSSのスコアが5点増えるごとにaMCIの発症リスクが30%増大していました。
  • PSSスコアに基づいて全体を5つのグループに分けて分析したところ、ストレスが最も強かったグループは残りの4つのグループの合計に比べて、aMCI発症リスクが2.5倍でした。
    ストレスが最も強いグループには、①女性、②教育水準が低い人、③抑鬱が比較的強い人が多く見られました。
抑鬱と遺伝子の影響は?

抑鬱はストレスだけでなく認知障害やアルツハイマー病のリスク要因でもあります。 そこで、抑鬱が上記の結果にどの程度影響していたかを分析したところ、ストレスとaMCI発症リスクとの関係に抑鬱が及ぼす影響は統計学的に無意味な程度のものに過ぎませんでした。

同様に、アルツハイマー病発症のリスク要因として知られるAPOE-e4対立遺伝子の有無も、上記の結果に影響していませんでした。
APOE-e4対立遺伝子
第19染色体にAPOE-e4対立遺伝子の一方または両方が存在している人では、アルツハイマー病を発症するリスクが増加します。 APOE-e4対立遺伝子の有無はDNA検査で調べます。
コメント
研究者は次のように述べています:
「今回の研究では心理的なストレスを感じている高齢者でaMCIのリスクが増加するという強いエビデンス(科学的な証拠)が示されましたが、幸いにも主観的なストレスというものは自分しだいでどうにかなります」
「主観的なストレスは日常的な出来事を自分がどう受け止め対処するかにより変わってきます。 したがって主観的なストレスは、マインドフルネス瞑想法や認知行動療法、薬物により軽減することが可能です。 主観的なストレスを減らすことで認知機能の低下を遅らせたり防いだりすることが出来るかもしれません」