ピレスロイド系殺虫剤が男児でのみADHDのリスク要因となる可能性

(2015年6月) "Environmental Health" 誌に掲載された Cincinnati Children's Hospital Medical Center(米国)の研究によると、蚊取り線香の殺虫成分でもあるピレスロイドという化学物質により子供が注意欠陥・多動性障害(ADHD)になるリスク増加する可能性があります。

米国では 2000~2001年にかけて代表的な有機リン系殺虫剤2種類の住居への使用が禁止された影響で、ピレスロイド系殺虫剤の使用量が増加しています。

ピレスロイド系殺虫剤は有機リン系殺虫剤に比べて毒性は弱いのですが、ピレスロイドによりオスのマウスに多動・衝動性・ドーパミン系の異常が生じることが複数の実験で示されています。
研究の方法

この研究では米国全土から収集された8~15才の子供687人のデータを分析しました。 データに含まれていたのは、ADHDの症状の有無やピレスロイド系殺虫剤のバイオマーカーの尿中濃度などでした。

ピレスロイド系殺虫剤のバイオマーカーの尿中濃度を調べたのは、8~11才ではデータの半数、12~15才ではデータの1/3でした(この半数と1/3は無作為に選ばれた)。 またこの研究では、次の2つに該当する場合にADHDであるとみなしました;
  • Diagnostic Interview Schedule for Children と呼ばれるツールでADHDであると判定された。
  • 過去にADHDと診断されたことがあると保護者が報告した。
結果

尿中から3-PBA(*)が検出された男の子ではADHDのリスクが、検出されなかった男の子の3倍でした。 男の子においては、3-PBAの尿中濃度が10倍になるごとに多動性と衝動性(†) が50%増加していました。

女の子では、3-PBAの尿中濃度とADHDのリスクやADHDの症状との間に関係は見られませんでした。

(*) 人体に入ったピレスロイド系殺虫剤(シペルメトリン、デルタメトリン、ペルメトリンなど)が体内で処理された結果生じて尿中に排出される物質。

(†) 多動性と衝動性はどちらもADHDの症状の1つ。 他に注意欠陥という症状もありますが、今回の研究では3-PBAの尿中濃度との間に関係が見られなかったようです。
留意点
ピレスロイド系殺虫剤は代謝速度が速くて体内に長期間は留まらないのですが、今回のデータに含まれていたのは尿検査1回分の結果だけでした(つまりピレスロイド系殺虫剤に暴露していたのに暴露していないとみなされるなどのケースがあったかもしれない)。 したがって、今後の研究で今回の結果を確認する必要があります。