腸内細菌バランスが乱れていると、加工食品に添加されている食物繊維で肝臓ガンが生じる?

(2018年10月) ジョージア州立大学とトレド大学が行い "Cell" 誌に掲載された研究(マウス実験)によると、精製度が高い(highly refined)食物繊維を加工食品に添加すると肝臓ガンのリスクが増加するなど健康に悪影響が生じる恐れがあるかもしれません。出典: Adding Refined Fiber To Processed Food Could Have Negative Health Effects

加工食品の食物繊維

食物繊維は健康に良いとして摂取が推奨されており、それゆえに加工食品には食物繊維が添加されることがあります。 しかし、このように添加される食物繊維は例えばイヌリンのように精製度が高いものです。 米国では近年になって、食物繊維を強化した食品を「健康増進に役立つ」と銘打って販売することが認められるようになっています。

研究の概要

肥満に起因する健康問題の軽減に精製したイヌリン(水溶性の食物繊維)が有効かどうかを調べるマウス実験を行ったところ、イヌリンを添加するエサで肥満は防げたものの、一部のマウスに黄疸が生じ始め、実験開始から半年後には多数のマウスが肝臓ガン(肝細胞ガン)になりました。

論文要旨に基づく情報

  • 腸内細菌を持たない無菌マウスでは、このようなことにはならなかった。
  • (腸内細菌バランスが乱れていない)普通のマウスにイヌリンを添加した高脂肪食を与えると、腸内細菌バランスが乱れて肝臓ガンになった。
  • (腸内における食物繊維の)発酵を薬物で阻害したり発酵に関わる腸内細菌を除去したりすると、腸内のSCFA(*)が著しく減少して肝臓ガンの発生が阻止された。
(*) 短鎖脂肪酸。腸内細菌が食物繊維を分解して生じる。他の研究では概ね健康に有益であることが示されている。

解説

この研究はマウス実験でしたが、今回の結果はヒトにも当てはまる恐れがあります。 精製度が高い発酵性食物繊維が添加されている加工食品が健康に有害かもしれません。

精製された食品が(特に肝臓の)健康に及ぼす影響について、今後の研究でさらに調べる必要があります。

今回用いられた食物繊維

今回のマウス実験に用いられた食物繊維はチコリの根から抽出されたイヌリンです。 チコリの根そのものは一般的には食用ではありませんし、チコリの根から食物繊維を抽出するときに化学的な処理が行われます。

今回のマウス

今回の実験に用いられたマウスは、当初より腸内細菌バランスに乱れが生じていました。 腸内細菌バランスが乱れていると肝臓ガンのリスクが増加します。

コメント

研究者は次のように述べています:

「加工食品に精製された食物繊維を添加しても、果物や野菜に含まれる天然の水溶性食物繊維と同じような有益性は得られないどころか、一部の人は肝臓ガンになってしまうかもしれません。

米国食品医薬品局(FDA)は最近、食物繊維を強化した加工食品の流通が促進されるかたちで法令の改正を行いましたが、この改正は浅慮に基づくものであり再検討が必要です」
別の研究者は次のように述べています:

「水溶性食物繊維は一般的に健康に有益ですが、今回の研究では、水溶性食物繊維が場合によっては健康に有害で肝臓ガンが引き起こされる恐れすらあることが示されました。

しかし、食物繊維が有害であると言いたいわけではありません。 今回の研究で示されたのはあくまでも『腸内細菌バランスが乱れている場合には、食物繊維を強化した加工食品が安全ではないかもしれず、そういう場合には精製された食物繊維で肝臓ガンが生じる恐れがある』ということです」