宗教的な家庭の子供の方が利他性が薄くて他罰的

(2015年11月) 宗教が子供の道徳心の発達にとって有益であると一般的には考えられていますが、"Current Biology" 誌に掲載されたシカゴ大学の研究によると、宗教的な家庭の子供の方が無宗教の家庭の子供よりも利他性が薄くて他罰的な傾向にあります。

研究の方法
子供の性質の調査

カナダ・中国・ヨルダン・南アフリカ・トルコ・米国の6ヶ国から選出された5~12才の子供 1,170人の利他性と道徳感受性を調査しました。

子供たちの利他性は「独裁者ゲーム」と呼ばれる利他性を測定するゲーム(ステッカーを他の子供と共有するかどうかを問われるゲーム)に参加してもらうことで評価しました。

道徳感受性は1人の登場人物が別の登場人物を意図的にあるいは偶然に突き飛ばすというアニメを何パターンか見せた後に、突き飛ばす行為がどれだけ悪質だったか(*)、そしてどの程度の罰がふさわしいかを各パターンについて尋ねることで評価しました。
(*) 突き飛ばした者に悪意があるとは明確に断定できる状況、悪意があったかどうか微妙な状況、到底悪意があったとは思えない状況というのを何パターンか見せたのでしょう。
親へのアンケート調査

そして、子供たちの利他性と道徳感受性を、子供たちの親を対象に行われたアンケート調査の結果と照らし合わせました。 アンケート調査では、①親自身の宗教的な信念と活動の状況、そして②自分の子供が他者への共感および正義に対する感受性をどの程度持ち合わせていると思うかについて尋ねました。

親が信仰している宗教は、キリスト教・イスラム教・無宗教の3つに分類されました。 それ以外の宗教は分析対象として人数が不十分でした。

結果
利他性

宗教的な家庭の方が「自分の子供は共感能力が高く、相手の立場に立って物事を考えられる人間だ」と親が思っている率が高くなっていました。

ところがそのような親の認識とは裏腹に、無宗教の家庭の子供よりも宗教的な家庭の子供の方が他の子供とステッカーを共有する(利他的である)ことが少なく、反社会的な行為に対して懲罰的であるという傾向が見られました。

また、子供たちの年齢が高くなるほどにステッカーを共有することが多くなっていましたが、宗教歴の長い子供ほどステッカーを共有しない傾向にありました。

他罰性

宗教を信じている家庭の子供の方が、反社会的な行為の判定基準が厳しく、反社会的な行為に対して望む罰も強いものでした。 大人を対象に行われた過去の類似研究でも同様の結果になっています。

コメント
研究者は次のように述べています:

「今回の結果は『宗教的な家庭の子供の方が利他的で他人に対して親切である』という世間的な認識とは食い違うもので、無宗教の家庭の子供の方が寛大でした」

「過去の研究結果と併せて、宗教が国を問わず子供の利他性に悪影響を及ぼすと言えそうです。 今回の結果からすると、宗教は道徳的な教育にとって重要ではないどころか足を引っ張る存在かもしれません」