(2017年10月) "Scientific Reports" に掲載されたフローニンゲン大学(オランダ)などの研究で、腎機能が少しでも低下している人に限りトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)の血中濃度が高いと死亡リスクが増加するという結果になりました。
TMAOとは
赤身肉・海産物・卵・乳製品などの動物性食品(*)を食べると、そうした食品に含まれているカルニチンやコリンなど(†)から腸内細菌(‡)がトリメチルアミン(TMA)という物質を作り出します。(*) 赤身肉は多量のカルニチンを含有しますが、赤身肉よりも海産物のほうがTMAの発生量が多いというデータもあります。
(†) ベタイン、レシチン、クレアチニンからもTAMAが作られますが、生産量は多くありません。
(‡) TMAを生産するのは、主としてファーミキューテス門とプロテオバクテリア門の腸内細菌です。そうして作られたTMAがフラビン含有モノオキシゲナーゼ3(FMO3)という肝臓の酵素によって変換されて生じるのがTMAOです。 腸内細菌もTMAからTMAOを作り出します。 逆にTMAOからTMAを作り出す腸内細菌もいます。
これまでの研究で、TMAOの血中濃度が高い人は心臓・血管・腎臓の病気になりやすいことが示されています。 TMAOは腎臓により体外に排出されます。
研究の方法
オランダに住む平均年齢53.5才の成人男女 5,469人のTMAO血中濃度を調べたのち中央値で8.3年間にわたり生存状況を追跡調査しました。
そして、TMAO血中濃度に応じてデータを4つのグループに分けて、グループ間で死亡リスク(死因は問わない)を比較しました。
結果
追跡期間中に322人が死亡しました。
死亡リスクに影響する様々な要因を考慮しつつ分析したところ、TMAO血中濃度と死亡リスクとの間に統計学的に有意な関係は見られませんでした。
しかし腎機能(eGFR値)別にデータを分けて分析すると、腎機能が少しでも弱っている(クレアチニンとシスタチンCに基づくGFR値が90未満である)場合に限り、TMAO血中濃度が最も高いグループは最も低いグループに比べて死亡リスクが18%増加していました。