(2015年9月) "Neurology" 誌に掲載されたジョージタウン大学医療センター(米国)の研究で、ワインなどに含まれているポリフェノールの一種であるレスベラトロールを服用することでアルツハイマー病のバイオマーカーが悪化しないという結果になりました。
アルツハイマー病が進行すると減少してゆく血中の物質が、レスベラトロールを長期間にわたって大量に服用した軽~中程度のアルツハイマー病患者では減少しなかったのです。
ただし、今回の結果から直ちに「アルツハイマー病にレスベラトロールが効く」と言えるわけではありません。 さらに、今回の試験で使われたレスベラトロールは医薬品と同じ品質基準を有する高純度のもので、一般には市販されていません。
この研究はフェーズ2の二重盲検ランダム化比較試験で、軽~中程度のアルツハイマー病患者119人を被験者として1年間にわたって行われました。
レスベラトロールの服用量は最大で1日あたり2g(1g×2回)でした。 高純度のレスベラトロール2gというのは赤ワインを千本飲むのに相当する量です。
12ヶ月間にわたってレスベラトロールの用量を徐々に増やしつつ服用したグループでは、アミロイドβ40と呼ばれる物質の血中および脳脊髄液中の濃度が全くあるいはほとんど変化しませんでした。 その一方で、プラシーボを服用したグループではアミロイドβ40の濃度が試験開始時に比べて減少していました。
研究者は次のように述べています:「アミロイドβ40は認知症が悪化したりアルツハイマー病が進行したりすると減ってゆきます。 しかし、だからといってレスベラトロールの服用が有益であると決まったものでもありません」
「レスベラトロールは血液脳関門(血液中の有害物質が脳細胞まで来ないようにするための防御機構。 血管の網で出来ている)を通過するようです。 血中だけでなく脳脊髄液中にもレスベラトロールが存在していました。 これは重要なことです」研究チームがレスベラトロールのアルツハイマー病への効果を調べようと思ったのは、レスベラトロールにサーチュインと呼ばれるタンパク質を活性化する作用があるためです。
アルツハイマー病発症の最大のリスク要因は加齢です。 動物実験では長期間にわたるカロリー制限(摂取カロリーを通常の2/3に減らす)によってアルツハイマー病などの老年性疾患の大部分の発症を防いだり遅らせたりできるという結果になっています。