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レチノイン酸が大腸ガンの抑制に有効? しかし、大腸ガン患者では不足

(2016年9月) "Immunity" 誌に掲載されたスタンフォード大学などの研究によると、ビタミンAから体内で作り出されるレチノイン酸という物質が大腸ガンの抑制において大切な役割を果たしています。

大腸ガンとレチノイン酸

マウスを2つのグループに分けて化学物質の投与により、一方のグループでは腸に炎症のみを、そしてもう一方のグループでは炎症と大腸ガンを生じせしめました。

そして、両グループの腸組織に存在するレチノイン酸の量を測定したところ、大腸ガンと炎症の両方が生じたグループは炎症だけのグループに比べて、レチノイン酸の量が明確に少なくなっていました。

さらに調査を進めたところ、大腸ガンが生じたグループでは腸組織が作り出す「レチノイン酸を合成するタンパク質」の量が減る一方で「レチノイン酸を分解する酵素」の量が4倍にまで増えていることが明らかになりました。 レチノイン酸が減っていたのは、このためだったのです。

レチノイン酸の補給で腫瘍が軽減
大腸ガンになったグループで、腸組織に存在するレチノイン酸の量を正常な水準に戻した(*)ところ、マウスの腫瘍が劇的に軽減されました。 レチノイン酸の活性を阻害した場合には逆に、腫瘍が悪化しました。

(*) ①レチノイン酸の補給、または②レチノイン酸を分解する酵素の不活化による。

レチノイン酸を補給するなら、ビタミンAではなくレチノイン酸自体を大量に補給することになると思いますが、レチノイン酸のサプリメントは市販されていないようです(化粧品に配合されているものしか見当たらない)。
ヒトの組織の調査
潰瘍性大腸炎の患者(腸に炎症が生じているだけ)と大腸ガンの患者から採取した腸組織のサンプルを用いて、それぞれの腸組織に存在するレチノイン酸合成タンパク質とレチノイン酸分解酵素の量(*)を調べたところ、ヒトでもマウスの場合と同様に、炎症だけの患者の組織に比べて大腸ガン患者の組織のほうがレチノイン酸分解酵素が多く、そしてレチノイン酸合成タンパク質が少なくなっていました。
(*) 保存されていたサンプルだったため、レチノイン酸の量を直接測定することはできなかった。

大腸ガン患者の医療記録を調べたところ、レチノイン酸分解酵素の量が少ない患者のほうが生存期間が長かったことが明らかになりました。

腸内細菌の関与
潰瘍性大腸炎の病歴が無い大腸ガン患者の腸組織でも(潰瘍性大腸炎の病歴がある大腸ガン患者と?)同様の異常がレチノイン酸合成タンパク質とレチノイン酸分解酵素の量に見られたことから、研究チームは別の原因が腸の炎症を引き起こしレチノイン酸の量に影響を及ぼしている(*)のではないかと考えました。
(*) 「腸の炎症がレチノイン酸の量に影響する」と何気なく述べられています。 この記事のここまでで「炎症だけなら問題ない」という意味合いになっているのと矛盾するように思いますが、原文でもこうなっています。 あと、「別の原因」に対応する1つ目の原因に関して言及していませんが、原文でも言及されていません。

腸内に自然に存在する細菌のうちに局所的な炎症を引き起こすものがいることが知られているので、腸内細菌がレチノイン酸欠乏および大腸ガン発症に関与しているかもしれないと仮説を立てて、ブロードスペクトラムの(作用対象となる細菌の幅が広い)抗生物質でマウスの腸内細菌を排除してみました。

すると、大腸ガンが生じているマウスやヒトの腸組織に見られたレチノイン酸代謝の異常(*)が阻止され、形成される腫瘍の量が劇的に減りました。 腸内細菌が生産する分子のなかに腸に著しい炎症反応を引き起こすものがあり、それがレチノイン酸の代謝に直接的に影響していたのです。 ただし、その分子を生産する腸内細菌の特定には至っていません。

(*) たぶん、レチノイン酸合成タンパク質の減少とレチノイン酸分解酵素の増加のこと。

CD8 T細胞
今回の研究ではさらに、レチノイン酸が免疫細胞の一種でありガン細胞を殺してくれる「CD8 T細胞」を活性化させることによってガンの発生を阻止したり鈍化させたりしていることが明らかになりました。 マウス実験では、レチノイン酸が少ないと腸組織における「CD8 T細胞」の数が減って活性も低下し、腫瘍が増大しました。