HDLコレステロールが利用されないために値が高いということも

(2016年3月) "Science" 誌に掲載されたペンシルバニア大学の研究によると、HDL(善玉)コレステロール値が高ければ安心だというわけでもありません。 HDLコレステロールを利用できない遺伝的体質であるためにHDLコレステロールが血中に大量に残っているだけかもしれないのです。

こういう人はHDLコレステロールがもたらす健康効果を得られないために、HDLコレステロールの血中濃度が高いにも関わらず冠動脈疾患のリスクが増加します。

研究者は次のように述べています:
「重要なのはHDLが(血中に)どれだけ存在するかよりもむしろ、HDLが有効に作用するかどうかです」
SCARB1遺伝子

「HDLコレステロールを利用できない体質」の原因となるのは、SCARB1という遺伝子の変異体です。 SCARB1はSR-B1(Scavenger Receptor B1)と呼ばれるHDLコレステロールの主要な受容体を作るのに必要とされる遺伝子です。 このSCARB1遺伝子がP376Lという変異体である人は、作られるSR-B1受容体が細胞の表面にまで到達できないためにHDLと結合することが出来ません。

研究の概要

この研究では、HDLコレステロール値が顕著に高い人たち328人の遺伝子を調べ、HDLコレステロール値を高くしている遺伝子を探しました。 そうして浮上した遺伝子の1つがSCARB1でした。

328人のうちにSCARB1遺伝子が機能していない人が1人いて、この人のHDLコレステロール値は150mg/d/Lという非常な高値でした(一般な値は50mg/d/Lほど)。

P376Lを2つ(母親由来と父親由来)持っていたのはこの人だけでしたが、P376Lを1つだけ持っているという人は他にも複数存在し、この人たちでもHDLコレステロールの血中濃度が高くなっていました。

P376Lを保有する人種
今回の研究では、P376Lを保有しているのはアシュケナージ系ユダヤ人(米国に5~6百万人、イスラエルに280万人が住む)に限られていました。 しかし研究者によると、他にもP376Lと同じような作用を持つ遺伝子変異体が存在するかもしれません。