高齢者の94%は何らかの感覚障害を抱えている

(2016年2月) "Journal of the American Geriatrics Society" に掲載されたシカゴ大学の研究で、米国では高齢者の94%が5つの感覚器官のうち少なくとも1つに感覚障害(*)が生じていることが明らかになりました。出典: Sensory Loss Affects 94 Percent of Older Adults
(*) "sensory deficit" を訳したもの。 "sensory deficit" のきちんとした定義は見つかりませんでしたが、断片的な情報を総合すると感覚に生じる異変を幅広く意味する言葉であるようです。 感覚の喪失や減衰だけでなく感覚の変質(味覚や色を正しく判断できないなど)も含むようです。
研究の方法

米国全土から選出された57~85才の中高年者 3,005人を対象に、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚という5つの感覚器官の検査を実施しました。

また、アンケートや聞き取り調査により、年齢・健康状態・社会経済的状態(収入・職業・学歴など)・飲酒量・薬物の使用などを調べました。

結果
全体

データ全体では64%の人で5つの感覚器官のうち少なくとも1つに感覚障害が生じていました。 2つまたは3つに重大な感覚障害が生じていたのは22%でした。

五感のうち感覚障害が最も一般的だったのは味覚の減衰で、程度に差はあれど74%の人に味覚の減衰が見られました。 触覚が減衰している人も多く、70%の人で多かれ少なかれ触覚が減衰していました。

高齢者

当初の予想通り、感覚消失は高齢者に多く見られました。 高齢者に限ると、2つの感覚器官に感覚障害が生じていたのは38%、3つ以上の感覚器官に感覚消失が生じていたのは28%でした。 高齢者で感覚障害が顕著だったのは、聴覚・視覚・嗅覚でした。参考記事: 40才からは嗅覚の衰えに要注意

人種と性別
年齢以外に、性別と人種も感覚消失のリスクと関係していました。
  • 男性は聴覚・嗅覚・味覚において女性よりも劣っていましたが、メガネ(あるいはコンタクトレンズ)を使用した場合の視覚においては女性よりも優れていました。
  • 黒人は聴覚は優れていましたが、他の感覚器官においては劣っていました。 ヒスパニック系は視覚・触覚・嗅覚において劣っていましたが味覚に優れていました。
感覚の重要性

今回の研究と同じシカゴ大学の研究チームが 2014年に嗅覚が衰えている高齢者は死亡率が高いという研究を発表しているほか、2015年に "JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery" に発表された研究では聴覚障害がある人も死亡率が高いという結果になっています。

味覚や嗅覚が衰えると食品の安全性を確認する能力が低下するため食中毒の危険性が高まりますし、触覚が低下すると火傷をしやすくなります。 聴覚の低下も交通事故などの危険性が増加する原因となります。

また、聴覚や嗅覚の衰えは認知症の兆候であることがあります。