重症の火傷と腸内細菌の関係

(2015年7月) "PLOS ONE" に掲載されたロヨラ大学の研究により、重度の火傷(熱傷)を負った患者では腸内細菌の構成に大きな変化が生じていることが明らかになりました。 善玉の腸内細菌がごっそりと減り、その分だけエンテロバクター科の細菌が増えていたのです。出典: Targeting Bacteria in the Gut Might Help Burn and Trauma Patients

エンテロバクター科の細菌は人体に有害となることがあります。 大腸菌やサルモネラ菌もエンテロバクター科の細菌です。

今回の発見から、火傷(ことによるとその他の外傷も)の患者にプロバイオティクスが有益となる可能性が示唆されます。
研究の方法

ロヨラ大学医療センターで治療を受けた4人の重症火傷患者から採取した大便のサンプルと、軽度の火傷を負った患者8人のサンプルとで腸内細菌の構成を比較しました。 サンプルの採取は火傷を負ってから5~17日後に行われました。

結果

エンテロバクター科の細菌が腸内細菌全体に占める割合が、軽症の火傷患者では0.5%に過ぎなかったのに対して、重症の火傷患者では31.9%でした。

解説

重度の火傷を負った患者が死亡する原因の75%が敗血症などの感染性合併症ですが、研究者はこのような感染性合併症に腸内細菌のバランスの乱れが関与しているのではないかという仮説を立てています。

仮説の内容
まず、火傷その他の外傷をきっかけとして、免疫系と腸内細菌の間で次のような悪循環が発生するように見受けられます:
免疫系は火傷などの傷に反応して炎症反応を起こす ⇒ この炎症反応により腸内細菌のバランスが崩れる ⇒ これに対して免疫系が炎症反応を強化するために、腸内細菌のバランスがいっそう崩れる

そして、このような腸内細菌のバランスの乱れにより胃腸管の内壁に異常が生じ、それが原因で有害な細菌が腸から血流中に流出しているのかもしれないと研究者は考えています。

今後の研究が必要
ただし、プロバイオティクスを用いて健全な腸内細菌叢を回復することで敗血症などの感染性合併症のリスクを下げられるかどうかは今後の研究で確認する必要があります。