肩の痛みに効くのはステロイド療法か物理療法か?

(2014年8月) Brooke Army Medical Center(米国)が肩の痛みに対する物理療法とステロイドの効果を比較した結果が "Annals of Internal Medicine" に掲載されています。
物理療法
物理療法では、関節と軟組織(筋肉・脂肪・血管など)に対して、ストレッチや、筋肉を収縮・弛緩させる技法、肩・胸・首の可動性を向上させるための運動などを行ないます。 物理療法を行なう患者は自宅でひとりでもできる運動プログラムを授けられます。

(物理療法というと一般的には運動以外に、温熱や、温泉、超音波、電気などによる治療も行なうようですが、この話においては運動だけを指しているようです)
この研究では回旋腱板に腱炎または滑液包炎が生じている18~65才の患者104人を2つのグループに分けて6週間にわたって、一方には物理療法(6回)を、もう一方にはステロイド療法を受けてもらい、(その後1年間のあいだ)経過を観察しました。 ステロイド注射は、1年間のあいだに3回までとしました。

主な結果は次の通りです:

  • ステロイド注射と物理療法のどちらでも、かなりの効果(50%ほどの症状軽減)が見られ、1年以上にわたってその効果が持続した。

  • ただし、ステロイド療法を受けたグループの方が病院の利用回数が多い傾向にあった。 (患部の問題が解決されていないために病院に行く回数が増えるのだと考えられます)

  • さらに、ステロイド療法を受けたグループのうち、物理療法に移行した人が20%、ステロイド注射が複数回必要となった人は40%だった。 (ステロイド注射が一度以上必要になるというのは、患部の痛みが解消されていないことを示しています)

  • 一方、物理療法を受けたグループでも、20%の人が1年間の追跡期間中にステロイド療法も受けていた。
これらの結果から、ステロイド注射を受けたくない患者は物理療法だけでも良いと思われます。

専門家のコメント
Mount Sinai Medical Center(米国)の教授は、今回の結果が自身の診療経験に一致しないと述べています。 彼の経験では、物理療法を選択した患者の大部分は、治療後に痛みが悪化しました。

「物理療法で痛みが悪化するのはおそらく、痛めている腱に筋力トレーニングの負荷が加わるためでしょう。 物理療法で症状が悪化するのも不思議ではありません」


この教授は、物理療法で十分な効果が得られない場合にはステロイド注射を治療の一環として用いるべきだと考えています。

「関節が堅くなっているのであれば可動性を回復するのにストレッチが有効です。 しかし、回旋腱板の腱に負荷がかかるような運動は避けるべきでしょう。

そして、(物理療法を行なっても)症状が解消されずに活動が制限される場合には、私ならステロイド注射を薦めます。 ただし、ステロイド注射は最大でも2回までです」


Lenox Hill Hospital(米国)の医師によると、肩の痛みを治療する前に、X線や MRI などによる検査により正確な診断を行なうことが大切です。 この医師によるとステロイド注射は、物理療法を開始する前、または物理療法の効果が出ないときに行ないます。 そして、ステロイド療法をしたあとには、自宅で運動プログラムを続けます。