睡眠不足により食欲が増える理由

(2016年3月) 睡眠不足の人では体重が増加しやすいことが知られていますが、"SLEEP" 誌に掲載されたシカゴ大学の研究により睡眠不足がカロリーの過剰摂取につながるメカニズムの解明が進みました。 睡眠不足の時にはエンドカンナビノイドと呼ばれる物質の血中濃度が増加して食欲が増すのだと思われます。出典: Sleep Loss Boosts Hunger and Unhealthy Food Choices

夜中に1時間を起きて過ごすと、眠って過ごす場合に比べて17キロカロリーを余分に消費します。 したがって例えば睡眠時間が4時間短くなることで増加するカロリー消費量は70キロカロリー程度ということになりますが、今回の研究の被験者が睡眠不足に余分に摂ったカロリーは300キロカロリー超でした。 4時間の睡眠不足で摂取カロリーが230キロカロリーも増えるというわけです。

研究の方法

20代の健康な男女14人に、睡眠不足の状態と睡眠を十分に取った状態で4日間ずつ過ごさせて血液検査をするという試験を行いました。

試験期間のあいだ被験者にはシカゴ大学の臨床研究センターに寝泊りしてもらいました。 血液検査では、グレリンという食欲を増進するホルモンとレプチンという満腹感のホルモンの血中濃度に加えて、エンドカナビノイド2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)と呼ばれる物質の血中濃度を調べました。
(*) これまでの研究で、睡眠時間が短いとグレリンの量が増えレプチンの量が減ることが示されています。 睡眠時間との関係で2-AGの血中濃度を調べたのは今回の研究が初めてです。
睡眠時間

睡眠不足の4日間における就寝時間は4.5時間で、実際に眠っていた時間は4.2時間でした。 睡眠を十分に取る4日間における就寝時間は8.5時間で、実際に眠っていた時間は7.5時間でした。

食事

試験期間中には、午前9時・午後2時・午後7時に食事をしました。 食事は両方の4日間で同じ内容のものが提供されました。

結果
2-AG血中濃度

睡眠を十分に取った翌日の2-AG血中濃度は、朝に低かったのが昼食後まもなくピークに達し、その後低下しました。

これに対して睡眠不足の翌日の2-AG血中濃度は、睡眠を十分に取った翌日に比べて33%も高く、ピークに達するのも90分ほど遅い午後2時頃(*)でした。

食欲
睡眠不足のとき被験者は「睡眠時間が十分だった日よりも食欲がある」と回答しました。 そして、食欲の高まりが顕著だったのは2-AG血中濃度が最高となる昼食後まもなく(*)でした。
(*) 昼食を食べる時間が午後2時というのと矛盾しますが、原文の通りです。
間食の誘惑
両方の4日間の最終日の夜(夕食をたっぷり(*)食べてからの経過時間が2時間以内)に被験者たちにオヤツ(†)を提示したところ、睡眠を十分に取った4日間に比べて睡眠不足の4日間ではオヤツによる摂取カロリーが50%増えていました。 脂肪摂取量は2倍でした。

(*) 1日の必要カロリーの90%に相当する量の食事。

(†) クッキーや、キャンディー、ポテトチップスなど。
結論
上記の結果から、睡眠不足によりカロリー摂取量が増えてしまうのはエンドカナビノイドの血中濃度増加が原因かもしれません。 研究者は次のように述べています:
「食事がもたらす快楽と満足感を増大させると思われる物質の血中濃度が睡眠不足により上昇することが明らかになりました。 睡眠不足はエンドカナビノイド系を増大させて 『食べたい』 という欲望を強めると思われますが、このエンドカナビノイド系はマリファナの有効成分が作用する対象でもあります」
留意点
今回の研究には被験者数が少ない・期間が短い・データ取得頻度が少ないなどの弱点があります。 しかしながら研究チームによると、今回の結果は統計学的な有意性が明確であるうえに、これまでに行われた関連研究のデータとも矛盾しません。