長時間の睡眠不足によって集中力が損なわれて元に戻らない?

(2014年3月) "The Journal of Neuroscience" に掲載されたペンシルバニア大学などの研究によると、長時間にわたる寝不足が脳の細胞に修復不可能なダメージを与える可能性があります。 この研究でマウス実験を行ったところ、睡眠不足によって、青斑核と呼ばれる神経細胞の一種が傷つき、失われていたのです。
青斑核は集中力と認知能力に深く関与しています。
研究の方法

マウスを次の3つのグループに分けて、3日後にマウスの脳組織を検査しました:

  1. 普段と同じ時間の睡眠を取るグループ
  2. 普段よりも睡眠時間が3時間少ないグループ
  3. 普段よりも睡眠時間が8時間少ないグループ
結果
②のグループでは青斑核でサーチュイン3(SirT3)の発現量が増加していたのに対して、③のグループでは全く増加していませんでした。
SirT3 は、ミトコンドリアによるエネルギー生産および酸化還元応答に必要とされるタンパク質で、代謝による損傷(metabolic injury)から神経細胞を保護する作用を持ちます。

そして、③のグループでは青斑核の25~30%が失われ、(酸化還元応答が減少したために?)酸化ストレスが増大していました。 このストレス(酸化ストレス?)によって、青斑核の内部ではタンパク質が折れ重なり、他の神経細胞との連絡が阻害される状況になっていました。

この点に関して研究者は次のように述べています:

「(青斑核内部でタンパク質が折れ重なっているために)残っている細胞(青斑核)も正常に機能していませんでした」

「少しの負担(3時間の睡眠不足)であれば体は耐えることが出来ますが、多大な負担(8時間の睡眠不足)には耐え切れず回復不可能なダメージを追ってしまいます」

また、この研究では SirT3 が生産されないように遺伝子改造したマウスも用いましたが、このようなマウスでは3時間の睡眠不足でも青斑核が損傷していました。

解説

今回の発見では、睡眠不足が受験生にとって有害となる可能性や、睡眠不足から脳の神経細胞を保護するための手段として SirT3 を利用できる可能性が示されました。 ただし、今回の研究はマウスを用いて行われたため、ヒトでも同じ結果になるとは限りません(ヒトの脳神経網はマウスと同じだそうですが)。

研究者によると、SirT3 の体内量は加齢や、糖尿病、高脂肪食、座ってばかりの生活などにより減少すると考えられるため、同じ睡眠不足であっても脳神経が受けるダメージの程度には個人差があると思われます。 (例えば、座っている時間が長い糖尿病の高齢者では Sirt3 の体内量がすごく減っているので、同じ時間の睡眠不足でも活発な若者よりも青斑核が損傷する度合いが大きい)