喫煙者では手術時の合併症リスクが増加するが禁煙で減少

(2013年6月) "JAMA Surgery" に掲載されたベイルート大学医療センターの研究によると、喫煙者では手術後に合併症(心臓発作や、血栓、肺炎、死亡)のリスクが増加しますが、手術の1年以上前から禁煙していた患者の場合には、このリスクが喫煙歴の無い患者に近い水準にまで低下します。

研究の方法

この研究では、喫煙者12万5千人、1年以上の禁煙者7万8千人、および非喫煙者(喫煙歴の無い人)40万人のデータを分析して、手術後30日間における喫煙と合併症の関係を調べました。

結果
今回の主な結果は次の通り:
  • 喫煙者は、禁煙者と比較して、手術後(30日以内)に死亡するリスクが17%、および心臓や肺の深刻なトラブルが生じるリスクが53%高くなっていた。
  • 手術後の死亡リスクは1日1パックの喫煙を10年間続けると有意に増加していたが、手術後の合併症のリスクは喫煙量や喫煙期間の増加に応じて増大していた。
  • 手術後の心臓発作のリスクは、非喫煙者との比較で、禁煙者では28%の増加であったのに対して、喫煙者では77%の増加だった。
  • 手術後の肺炎のリスクは、非喫煙者との比較で、禁煙者では16%の増加であったのに対して、喫煙者では50%の増加だった。 非喫煙者の1%が手術後に肺炎になるのに対して、喫煙者では2%。
  • 手術後に人工呼吸器が48時間を超えて必要となった患者の割合は、喫煙者では3%、禁煙者では2.8%、非喫煙者では1.8%だった。
専門家のコメント
米国 Mayo Clinic の医師は次のように述べています:
「手術時に喫煙がリスク要因となることはわかっていましたが、これまでの研究では心臓や肺の病気など喫煙関連の疾患によるリスクと、喫煙自体のリスクとの区別がついていませんでした」(上記の結果は喫煙関連の疾患によるリスクを考慮に入れたうえでの数字です)
この医師によると、タバコは様々な面において手術のリスク要因となります。
「例えば、タバコに含まれる一酸化炭素によって血液の酸素を運ぶ能力が減少するので、(心臓への血流減少などの)合併症のリスクが増加します」

別の専門家の話によると、今回の研究には無作為化が行われていないなどの弱点があります。 このため、例えば「禁煙者には肥満していて糖尿病の白人男性が多い」などの偏りが生じていて、それが研究結果に影響している可能性があります。

ただし、この専門家も今回の研究結果が他のエビデンスと合致していることは認めており、喫煙者が手術前に禁煙することを推奨しています。 今回の研究からは、1年未満の禁煙で手術時の合併症リスクがどれだけ下がるかは明らかではありませんが、手術までに1年未満であっても禁煙しておいて損は無いと、この専門家は考えています。