スタチンの間葉系幹細胞への作用は両刃の剣

(2015年8月) "Cell Physiology" 誌に掲載されたテュレーン大学(米国)の研究によると、コレステロール低下薬であるスタチンが間葉系幹細胞(MSC)にもたらす作用には良い面と悪い面があります。出典: New Research Shows Why Statins Should Be Viewed as a Double-Edged Sword

スタチンがMSCに作用して、MSCがアテローム性動脈硬化(*)を促進するマクロファージへと変化するのを抑制するけれども、それと同時にMSCが骨細胞や軟骨細胞へ変化するのまで抑制してしまうというのです。
(*) アテローム性動脈硬化は血管の内側にプラーク(脂肪やカルシウムで構成される)が蓄積することで生じ、心臓発作・脳卒中・早死にの原因となります。 スタチンは肝臓におけるコレステロールの生産をブロックして悪玉(LDL)コレステロールを減らすことによってアテローム性動脈硬化のリスクを軽減します。
良い面

スタチンを長期間にわたり使用するとMSCからマクロファージへの分化が阻止されて炎症が減少し、心血管疾患を抱えている患者では(アテローム性動脈硬化の)プラークの安定性が改善される可能性があります。

MSCとマクロファージ

マクロファージは主として骨髄に存在する幹細胞が成熟することで作られますが、テュレーン大学の研究チームは以前の研究でMSCからもマクロファージが作られることを確認しています。

MSCは骨髄幹細胞と違って全身に存在します。 骨髄幹細胞は主として血球になりますが、MSCは骨・軟骨・筋肉・マクロファージなどあらゆる種類の細胞に分化することができます。

マクロファージのアテローム性動脈硬化への寄与
アテローム性動脈硬化においてマクロファージは、プラークの形成と破裂に深く関与しています:
  • プラークの形成
    マクロファージは血管壁に沈着した脂肪を取り込んだり(血管の)損傷箇所に仲間のマクロファージや炎症関連のタンパク質などを集めたりします。 マクロファージにより炎症が増大するために血管壁の内側にプラークが蓄積し、血管がさらに細くなります。
  • プラークの破裂
    マクロファージはプラークを血流から隔てている線維性被膜を脆弱にする酵素を放出します。 これによってプラークが破裂しやすくなります。 プラークの破裂は血栓の原因となり、血栓は脳卒中や心臓発作の原因となります。
悪い面

スタチンはMSCが骨細胞や軟骨細胞へと変化するのも妨げるため、MSCの①老化・死滅率が増加し②DNA修復能力が落ちます。

コメント
研究チームは次のように述べています:
「スタチン療法はアテローム性動脈硬化が生じている患者には有益だが、幹細胞への作用ゆえに心血管疾患を抱えていない患者に予防的に用いるのには向かないかもしれない」

スタチンの利用範囲を心血管疾患の先制療法にまで広げることが一部で提唱されていますが、スタチンの使用により記憶喪失・筋肉障害・糖尿病リスクの増加などの副作用が生じることがあります。